2022 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of History of Islamic Pottery in Egypt Based on the Research of the Fouquet Collection at Ohara Museum of Art
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22H00618
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桝屋 友子 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (40300735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 百里子 (阿部百里子) 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (50445615)
神田 惟 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (20823462)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 陶器 / エジプト / イスラーム / 大原美術館 / 陶器史 / フスタート / 児島虎次郎 / フーケ |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀末、フランス人医師フーケはエジプト、カイロの旧市街であるフスタートにてイスラーム時代の古い陶片が無数に散らばっているのを発見し、それを採集した。これらの陶片は、イスラーム時代の陶器生産の重要な中心地であったはずのカイロにおいてどのような陶器が生産され使用されてきたかを如実に物語る貴重な資料と言える。このフーケの発見に基づき、その後組織的な発掘がフスタートで行われることとなった。フーケが採集した陶片は収集時期が他に先駆けるために、状態が良く、陶片が大きいことで知られるが、1914年のフーケの死後、渡欧した日本人洋画家児島虎次郎がそのうち400点を岡山県倉敷市の実業家大原孫三郎のために購入し、その後同市の大原美術館の所蔵となった。児島購入の陶片資料は、欧米においては長らく所在不明と考えられたものであり、大原美術館でも学術的な調査が行われないまま、今日に至っていた。この度、これら貴重なイスラーム陶器資料をイスラーム美術研究者が詳細に記録、調査することによって、エジプトにおけるイスラーム陶器通史の構築を美術史の立場から提示し、国際的な学術貢献を果たすことが本研究の目的である。 初年度は、大原美術館学芸課のご協力をいただき、研究分担者が陶片の写真撮影、実測図作成といった記録作業と美術史的・考古学的調査を、また研究協力者がマムルーク朝線刻文釉下彩陶器片の科学調査を開始した。しかし、考古学的な陶片実測・撮影において、資料の劣化が著しく、陶片の実測から実測図デジタルトレースという通常の方法では表面の釉薬が剥離し、資料のダメージが大きいことが判明したため、通常の方法の再検討を行う必要が生じ、実測図作成のための研究費を次年度に繰り越した。次年度においては、現地で撮影した写真データをグラフィック処理し、この情報に基づいて陶片の図化を行うという方式を採り、全点の実測図作成を完了させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大原美術館にて陶片の写真撮影・実測図作成といった記録作業と、美術史学・考古学的研究を開始したが、陶片資料の状態が他のコレクションのものよりも優れているとはいえ、経年劣化により釉薬の剥離状態が著しく進んでおり、実測図作成のための実測および撮影を通常の方法で行うことができないことがわかった。そのため、実測図作成方法を改めて検討し直し、研究費を次年度に繰り越して作業を再開することとした。初年度ではこのような遅れが生じてしまったが、最終的には次年度(令和5年度)に実測図作成を全点について完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度には大原美術館所蔵の400点の陶片全ての記録作業(写真撮影・実測図作成)を完了させたうえで、さらに個々の陶片の美術史学的・考古学的・科学的研究を進めていく予定である。また、フーケが採集したフスタート遺跡等の現在の状況や大原美術館所蔵以外のフーケ採集陶片のその後、フーケ採集以外のフスタート出土陶片の概要、児島虎次郎のパリでの陶片購入活動にまつわる状況を把握するため、海外での調査を含め遂行していく予定である。令和6年度にはそれぞれの時代と陶器技法に基づくイスラーム陶器史各論、フーケ、児島虎次郎、大原美術館に関連する19世紀末から20世紀前半にかけてのフスタート出土陶片の収集経緯の説明を添えて陶片全点の英文カタログを執筆開始する。
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