2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H00621
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
益田 朋幸 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70257236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 裕文 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40537875)
辻 絵理子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (40727781)
児嶋 由枝 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70349017)
武田 一文 筑波大学, 芸術系, 助教 (90801796)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ビザンティン美術 / クレタ島 / キリスト教図像学 / 聖堂装飾プログラム / カッパドキア |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年夏にクレタ島(ギリシア)とカッパドキア(トルコ)の聖堂調査を行った。前科研(基盤B、2021年度繰越分)との合算であったが、両科研の課題は重なる部分があるため、調査の成果を両科研で明確に区分することは困難である。クレタ島、カッパドキア両地において、多くの聖堂壁画を撮影し、装飾プログラムを記録・記述した。 いくつかの目立った成果を記す。クレタ島KastelliのChristos Aphentis聖堂は、13世紀と考えられている古典主義的なフレスコ壁画を有している。クレタが常に辺境として特異な装飾プログラムを採るとは限らず、このような古典的システムを採用する聖堂があることを確認できた。Ano ViannosのAgia Pelagia聖堂には、幼児キリストを背負う聖クリストフォロスのイコン的図像が存在する。この図像はポスト・ビザンティン期にイタリアの影響で成立したと考えられてきたが、14世紀の作例が存在することがわかった。 カッパドキアではBahcheriのIcheridere no.1 (通称Karanlik Kilise)(9世紀)の壁画が特筆に値する。北壁に稚拙な「アブラハムによるイサクの犠牲」を描くほか、西壁には「天国に迎えられる10人の乙女」が配されている。この図像がビザンティン聖堂に描かれることは非常に稀で、北マケドニア、レスノヴォ修道院以外に類例を知らない。9世紀のカッパドキアと、14世紀のバルカン半島。両者に直接の影響関係があったとは考えられないから、やはり共通の手本として首都コンスタンティノープルを考えなければならない。こうした時空ともにかけ離れた類似プログラムを蒐集することで、ビザンティン美術の空白が埋まってゆくであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のために海外調査が実施できない可能性も考えて代替計画を立てたが、幸いクレタ島とカッパドキア両地で調査を行い、想定以上の成果を上げることができた。両地の現地住民の協力が得られたことが大きく与っている。クレタ島Agios Vasileios村の村長は、Panagia Spiliotissa修道院と交渉をして、Agios Ioannis Prodromos聖堂の特別調査をさせてくれた。またクレタ島Odigitria of Gonia修道院の修道士Theologos師は調査に同行し、いくつもの聖堂を見出してくれた。こうした人間関係上の幸運が、今回の調査を予想以上に実り多いものとしてくれたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も夏に海外調査を行う予定である。しかしここ最近の航空券の値上がり、現地ホテル等の物価上昇が、予算を圧迫していることは事実である。根本的な対応策は困難であるが、調査の規模(人数、期間)を小さくし、節約に努めなければならない。
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Research Products
(6 results)