2023 Fiscal Year Annual Research Report
キャクストン版『黄金伝説』「聖人伝の部」の本文研究と校訂版の作成
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22H00646
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
徳永 聡子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (60453536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 公二 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (80939645)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 聖人伝 / インキュナブラ / キャクストン / 『黄金伝説』 / 本文校合 / 書誌学 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、15世紀末にイングランドでウィリアム・キャクストンが出版した『黄金伝説』(ヤコブス・ド・ウォラギネ編纂)について、「翻訳」、「編集」、「印刷」の観点から分析し、その成果をもとに「聖人伝の部」の前半部を校訂版として発表することを目指している。2年目に当たる2023年度には、英訳版とフランス語版の底本の転写作業とそれらのテクスト校合、またキャクストン版の複数の現存本の校合を前年度に続けて行った。 研究代表者は、英訳原典であるキャクストン版の底本と定めた、1st settingのケンブリッジ大学図書館所蔵本を、前年度に取得したデジタル画像を用いて、2nd settingのグラスゴー大学図書館との比較校合を引き続き進めた。2023年度に完了にまでは至っていないが、予定していた作業は終えることができ、2024年度前半には終える見通しが立ってきた。全ページを頁ごとに比較校合する作業はこれまでの先行研究でもなされたことがなく、1st settingと2nd setting の本文上の違いは未解明であったが、2023年度の研究によってその様相が見えてきた。ただしデジタル画像だけでは確認できない箇所もあるため、夏の長期休暇を活用して現地での資料確認も行った。また研究協力者の協力を得て、校訂テクストの土台作りと附注ならびにグロッサーリー作成も進めることができた。 研究分担者は、仏語原典の底本として使用する、15世紀刊本 『黄金伝説』の大英図書館本の転写作業を引き続き進めた。2023年度はMaurice and Companionsまでの転写を完了させ、進捗状況は順調である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していた、本文転写と原典校合、および校訂作業については予定通りに進んでいる。研究補助によって原典校合のさらなるスピード化を図る予定であったが、この点は次年度に向けた改善点である。また研究成果として論文を発表することができたが、新たに査読付き国際学術誌への英語論文の投稿はできなかったこと、口頭発表を行えなかった点は次年度に向けた改善点である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は前年度の反省を活かして、口頭発表を国内と国外でそれぞれ1回ずつは行うことが決定している。これにより他の専門家からのフィードバックを受けて研究の推進へとつなげていく。また2024年度はサバティカルを取得するため、研究に集中する時間を確保することができる。夏と冬には長期期間、海外の図書館での資料調査を行うことを予定している。
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