2022 Fiscal Year Annual Research Report
学びの場におけるCLD生徒の言語使用の分析とデータベースの構築
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22H00666
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
澤田 浩子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70379022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 元貴 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (30733620)
唐木 清志 筑波大学, 人間系, 教授 (40273156)
蒔苗 直道 筑波大学, 人間系, 准教授 (40345939)
山本 容子 筑波大学, 人間系, 准教授 (40738580)
米田 宏樹 筑波大学, 人間系, 准教授 (50292462)
徳永 智子 筑波大学, 人間系, 准教授 (60751287)
長田 友紀 筑波大学, 人間系, 准教授 (70360956)
山元 一晃 金城学院大学, 文学部, 講師 (70799866)
井出 里咲子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80344844)
落合 哉人 東京福祉大学, 教育学部, 助教 (00962226)
三盃 亜美 筑波大学, 人間系, 助教 (60730281)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | CLD児 / 外国人児童生徒 / 日本語学習支援 / 教科学習支援 / 言語データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、CLD児の言語活動データについて、アセスメント場面と日本語学習場面からなる約60時間の対話データ、47件の作文データのテキストコーパスを作成し、主に語彙使用、相互行為の観点から言語使用のあり方を分析した。 (1) 言語活動データのコーパス化:茨城県の公立中学校生徒を対象に、大学生等が実施した学習支援活動(オンライン・対面)を映像・音声にて記録したものである。アセスメント場面は「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」の<話す><書く>を実施したもので、<話す>はCLD生徒32名52件22時間(形態素数136,820)、日本語母語話者生徒14名14件4時間24分(形態素数29,663)の対話データ、<書く>はCLD生徒22名38件、日本語母語話者生徒9名9件の作文データをテキスト化した。日本語学習場面は、同一のCLD生徒と支援者とのやりとりを経時的に分析できるようデータを選定し、CLD生徒8名40件34時間23分(形態素数96,403)をテキスト化した。以上のコーパスはいずれもELANデータ、テキストデータ、短単位解析データ、長単位解析データからなる。 (2) 言語使用の分析:語彙使用の観点からは、DLA<話す>では日本語ステージが高いほど異なり語数・語彙多様性ともに増加する一方で、DLA<書く>では、延べ語数・異なり語数はステージが上がると増加する傾向があるが、語彙多様性はその傾向が見られないことが明らかとなった。相互行為の観点からは、アセッサー側の発話にも着目し、CLD生徒の日本語能力に応じてアセッサー側の応答詞の使用傾向も変動することを明らかにした。その他、読み書きに弱さがある生徒に対して、DLAとは別に客観的な読み書き・語彙検査を実施し、学習障害が疑われるケースが含まれることを確認した。今後データベースの設計において考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年間で予定しているデータベース構築の予定に沿って、順調に学習支援の実践とデータの収録を実施しており、テキスト化やタグづけ作業なども順次、滞りなく実施している。多様な言語活動の蓄積という観点で言うと現時点ではやや不十分な点はあるが、言語活動データのコーパス化において、おおむね順調に進展していると言える。また、言語使用の分析においても、2022年度に発表されたのは主に語彙使用と相互行為に関する分析であったが、その他、動詞タイプと文構造理解の関係や、談話の展開と収束に関するコミュニケーション・ストラテジーの分析なども同時に進めており、2023年度に向けて今後順次、発表・公刊を行なっていく予定であり、こちらもおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、初年度に蓄積したデータを見直し、データベースの言語的多様性を検証し設計を見直すとともに、蓄積されたデータに対する言語分析を継続して行う。前者は(1) 言語活動構築班、後者は(2) 言語データ分析班の活動により推進される。 (1) 言語活動構築班は、CLD生徒への学習支援活動として「学びの場」のデザインを担当する。2020年度から日本語学習、国語科学習、算数・数学科学習において、学習支援活動を実施をしており、2022年度には、社会科学習、理科学習、キャリア学習にも展開した。本年度の上半期にはこれらのデータを見直し、言語的多様性を検証することで、データベースの設計をより精緻化する。その上で、下半期には、修正後の設計のもとで新たな学習支援活動の試行実施とそこでのデータ収集を実施する。学習支援の実践活動により得られた言語活動データは、順次データベースとして収録する対象を選定し、書き起こし作業を行う。また書き起こし作業の完了したデータから、個人情報処理や検索タグ付与などを行う。 (2) 言語データ分析班は、(1)で得られたデータベースをもとに分析を行う。1. 語彙・コロケーションの獲得、2. 文・談話の生成行動、3. コミュニケーション・ストラテジー等を含む相互行為、4. ナラティブ、の4つの言語的階層から包括的に分析を加える。1、2、3については、2022年度にそれぞれ一定の成果を得ることができており、本年度はその知見をもとに、データ量を増やして分析を拡大する。4については現時点でデータが十分でなく、本年度は分析に必要なデータの収集設計から見直し、データ収集を強化する必要がある。以上のように、本年度の終了時までにはそれぞれの言語的階層における分析結果を析出することを目指す。
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Research Products
(11 results)