2022 Fiscal Year Annual Research Report
New Possibilities in Post-WWII History: Cross-Cutting Studies on Expo History
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22H00685
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐野 真由子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (50410519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有賀 暢迪 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (90710921)
飯田 豊 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90461285)
市川 文彦 長野大学, 企業情報学部, 教授 (00203092)
井上 さつき 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 名誉教授 (10184251)
君島 彩子 東北大学, 国際文化研究科, JSPS特別研究員(RPD) (90875296)
辻 泰岳 筑波大学, 芸術系, 助教 (10749203)
牧原 出 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00238891)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 国際博覧会条約 / 脱植民地化 / 発展途上国 / 対等 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際的に研究史の空隙となっていた第二次大戦後の万国博覧会史に取り組むものである。その目的は、催事としての万博それ自体を詳解することではなく、万博史研究をレンズとして用いることにより、国際情勢から、開催・参加各国内の政局、関係業界の動向、関係者個々人のミクロな経験までを途切れなく見通し、かつ、自ずと世界の多様な視点に立脚する、新たな戦後世界史叙述の可能性を提示することにある。 研究期間全体として、 ①学際的な顔合わせのもと、メンバー各自が専門的な調査能力を持つ分野の万博関係資料収集を通時的に行い、分析する、 ②研究対象とする第二次大戦後の時代を7つの主要万博で区切り、多領域の資料(①)を互いに接続することで、各時代の「世界を輪切りにする」像を描く、 という縦横の軸を持って進めることとしているが、初年度は各自が①の資料収集から着手し、約3ヵ月に一度の研究会をペースメーカーとして進捗を報告し合い、議論を重ねた。並行して②の観点においては、主に1958年ブリュッセル万博から1970年大阪万博までの時期について、国際社会の脱植民地化過程への着眼を年間テーマとして共有し、メンバーの多角的な知見を持ち寄って集中的な検討を行った。結果として、国際的にも先行研究のない、「万博史研究をレンズとして用いる」脱植民地化研究が4論考(および座談会記録1件)に結実し、また脱植民地化研究においてこの視座が有効であることが示された。 また、本科研費補助金の支援により、研究成果を広く社会に発信する媒体『万博学/Expo-logy』が創刊に至ったことは、研究初年度の特筆すべき実績である。刊行時(2022年12月)には、定例研究会を拡大する形で同時通訳付きの国際研究集会をハイブリッド方式で実施し、とくに上記①と関連する万博資料の所在や研究上の問題点についてミニ・シンポジウムを組織し、議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上欄6の研究軸①②のうち、初年度は①の基礎的資料収集に専念する段階と想定していたが、並行して②が進展し、かつ、主要万博によって時代を区切るにとどまらず、脱植民地化過程の分析という年間テーマを共有して集中的な検討を行ったことは、当初の計画を上回る進展であった。その一環として研究代表者は、国際博覧会条約(1928年)から「植民地」という文言が消えた「1972年改正」を一次資料によって詳細に分析し、国際的にも先行研究のないその経過と意義を明らかにした。 加えて特筆すべきは、研究成果を可視化する媒体として雑誌形式の査読付きジャーナル『万博学/Expo-logy』(年1回刊行、思文閣出版)を創刊したことである。上記のテーマを受けて、その創刊特集を「植民地なき世界の万博」とし、研究協力者の寄稿を含め、「万国博覧会と「植民地」の消滅 ―国際博覧会条約一九七二年改正を中心に」(佐野真由子)、「万国博覧会における「アフリカ表象」をめぐって」(ウスビ・サコ)、「パビリオンと音楽―戦後の万博における前川國男」(井上さつき)、「コラム 大阪・関西万博における途上国支援について―実務担当者の目線から」(一坂浩史)、「座談会 対等であるとはどういうことか」(吉田憲司・佐藤仁・岩田泰・佐野真由子)の5件を収録したほか、特集以外にも本研究の成果を示す論考を掲載した。本誌は研究の深化と社会貢献の効果を併せ持つ重要な研究ツールであり、これを初年度から稼働させることができた意義は大きい。なお、同誌は学際領域における査読の方式にも新機軸を打ち出すべく、創刊号からその試行を開始している。 以上の過程全体において、各メンバーの担当領域を超えた資料収集が可能な人材(とくに新興独立諸国の動向や開発援助の専門家)の協力を得、関係を築いたことも、「万博史研究をレンズとして用いる」研究の有効性を広く確認することにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
上欄6記載の二軸は今後も有効であり、つねに念頭に置いて本研究を進めていく。①では、申請当時から目標としていたとおり、「万博」と明示された各国の公的報告書をはじとする基本資料にとどまらず、官はもとより民のあらゆる業界に万博につながる資料が見出されるとの観点から、それらを広範な「万博資料」群として発見し直していく作業を重視する。 一方②については、初年度の成果を踏まえ、共通テーマを立てて複数の万博を連続的に検討する方針を採用する。第2年度のテーマは「万博と冷戦」とし、これを上記の『万博学/Expo-logy』第2号の特集とする予定である。 加えて、②に言う7つの主要万博(1958年ブリュッセル万博、 1962年シアトル万博、1967年モントリオール万博、1970年大阪万博、1975年沖縄万博、1985年つくば万博、1992年セビリア万博)のなかでも、初年度の研究で光が当たりにくかった1975年以降の万博群に考察の範囲を広げて取り組む必要があるが、これは主に3年度目以降の課題とする。また、これら一連の万博の前後にあたる「1945年BIE再開時の経緯」「1994年決議直前の動き」をさらに掘り起こすことも研究期間中の重要課題である。 こうした全体を通じ、催事としての万博それ自体を詳解するのではなく、万博史研究をレンズとして、国際情勢から開催・参加各国内の政局、関係業界の動向、さらには関係者個々人のミクロな経験までを途切れなく見通し、かつ、自ずと世界の多様な視点に立脚した、新たな戦後世界史叙述の可能性を提示するという本研究の目的には変更がない。その間、約3ヵ月に1回の研究会を実施し、そこに隣接諸領域の研究者や博覧会実務の関係者らを招いてネットワークの拡大・深化を図る想定にも変更はない。『万博学/Expo-logy』も継続的に刊行し、研究成果を広くタイムリーに社会に還元していく。
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Research Products
(25 results)