2022 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of an identification system for Jomon pottery types by AI (artificial intelligence) and creation of unknown Jomon pottery system
Project/Area Number |
22H00713
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 豊 京都大学, 文学研究科, 准教授 (00197625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 淳司 京都大学, 農学研究科, 教授 (40183842)
高野 紗奈江 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (80910603)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | AI / 人工知能 / 縄文土器 / 分類 / 系統 / 周期構造 / CNNモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、飛躍的な進歩を遂げているAI(人工知能)を縄文土器の編年研究に導入することによって、縄文土器型式の識別システムを構築し、時間と空間における縄文土器型式の関係性を客観的に描き、既知の土器編年と系統樹を批判的に検証することを目的としている。この目的を達成するために、4つの課題(①:縄文土器型式を識別する A I の構築、②:縄目文様・素材を識別する A I の構築、③:A I による縄文土器型式の時空間的座標軸に基づく相関関係の復原、④:A I による既知の縄文土器系統の検証と未知の縄文土器系統の創造)を設定し、初年度は①と②に取り組んだ。 ①を達成するためには、精度の高い大量かつ良質な学習用データが不可欠である。縄文土器の実測図・拓本・写真を報告書等から集成するとともに、資料化がなされていない資料についても、写真撮影等をおこなってデータの集積をはかった。また2次元画像ではあるものの、微細な凹凸まで高精細に描きだす新しいデジタル技術〈ひかり拓本〉や当初は想定していなかったが、3Dモデルが学習用データとして利用できないかも検討した。学習用データをCNN(Convolutional Neural Network)モデルを組んで開析を始めた。 ②では、縄目のパターン学習をおこなうために、標本になる縄文原体と施文粘土板(各約160種)の復原製作を終えて写真撮影を行い、画像をAIに認識させる適切な方法の模索を開始した。縄目文様の周期構造解析とCNNモデルを組んで機械学習をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①の課題を達成するための土器型式を認識するための画像データは、実測図・写真といった研究データとして通常扱うものに加えて、今後の活用が期待できる〈ひかり拓本〉によるデータの集積もおこなった。縄文土器の画像は、全体の形状を完全な形で認識できるものは少なく、多くは部分的な情報しか得られない。そのためフラグメント化した情報を一連の系列に沿って意味づける必要があり、解析は単純な画像認識では扱えないことがわかった。 一方、②では、縄目のパターン認識を追究した。標本資料は一つのモデルに対して一つなので、機械学習的な手法が難しい。そこでまず、縄目文様の周期構造解析を試みて、2次元フーリエ変換と2次元自己相関を検討した。その結果、それぞれの文様から得られるパターンが微妙に違うので、判別は可能であることが判明した。そのうえで、一枚の粘土の画像を、何分割かして複数のデータを作成し、それを元にCNNモデルを組んで機械学習をおこなった。その結果、どのようなクラス分けをするかで結果は変わってくるが、モデル粘土板による縄目文様のパターン認識では8割程度の正答率を得ることができた。 以上のように、②の課題では、ほぼ計画通りの進展が見られたが、①の課題では、方法の部分での再検討を余儀なくされたので、やや遅れているという評価を与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の項で記したように、縄文土器型式を識別する A I モデルの構築は、単純なCNNモデルでは困難であることが判明したので、モデル理論などを組み込むとともに、画像生成AIの一つであるVAE(Variational Auto encoder)など、新たなAIを導入して、構築の足がかりを構築したい。精度の高い大量かつ良質な学習用データが不可欠なので、次年度以降もデータの集積は継続して進める。 縄目文様を識別する A Iについては、縄目文様の周期構造解析から、文様から得られるパターンが微妙に違うので判別は可能であることが判明している。パターン解析を進めることで、右らせん、左らせん、折り返しあるなしとか、を解明したい。縄目文様は、縄文原体と呼ばれる施文具を用いてつけられる。その素材は植物繊維や動物の腱などが想定されているが、具体的に識別した研究はほとんどない。これをAIを用いて精度の高い識別を構築するために、方法の開拓も含めて検討をおこなう。
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