2023 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代のヒスイ・コハクを用いた装身具の総合的研究
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22H00724
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
栗島 義明 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員(客員研究員) (60445864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷畑 美帆 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (10440174)
水ノ江 和同 同志社大学, 文学部, 教授 (10824568)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 縄文 / 装身具 / 勾玉・小玉 / ヒスイ / 在地系石材 / 緑色石英 |
Outline of Annual Research Achievements |
23年度の研究実績として特筆されるのは9月に実施した山形県材木遺跡の学術調査である。糸魚川産のヒスイ製装身具が日本列島の全域に流通していることが明らかだったが、その一方では列島各地で少量ながらも在地産の緑色系石材を用いた製装身具製作も想定されてきた。しかし、石材が特定された上で作工程が明らかとされたケースは殆ど無い。今年度に実施した材木遺跡からはヒスイに類した緑色透明感を備えた緑色の石英を用いた装身具製作の姿が明らかとなった。調査によって縄文時代晩期(2,500年前)に形成された遺跡内から原石・分割・粗割・整形・未穿孔などの緑色石英製品が検出され、この地で勾玉や小玉が製作されていたことが判明した。特定石材を用いた装身具製作の痕跡が明らかとなった例は本州地域では初めてであり、その重要性を鑑みて調査概要と出土遺物情報については速やかに報告書として刊行してその成果を公けとした。 材木遺跡の調査成果については年度末に開催したシンポジウムで広く研究者間で共有し、またそこでは改めて縄文時代の装身具について東日本全域での様相や特徴について議論を重ねた。この会では、装身具佩用人物の食性問題やその社会的扱いについての新たな問題も提起され、特に装身具を身に付ける人物が殺傷対象になっていた可能性も論じられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初から山形県材木遺跡の発掘調査を計画し、地元教育委員会や県考古学会他との調整を重ね、9月に約1週間の調査を実施した。短期間の調査で住居などの遺構は未検出ではあったものの、土器と石器を含めて3000点以上の遺物発見がされた。縄文晩期末葉の単純遺跡であり、多数の遺物の中には勾玉・小玉などの装身具と共に約30点の緑色石英遺物が発見された。原石や加工品が主であるが、勾玉や小玉の未製品も含まれており、ここでヒスイ代替石材とした緑色石英を用いた装身具製作が行なわれていたことが明らかとなった。これは本州地域では初めての発見例であった。 調査成果について年度内に分析し、年度末に報告書として刊行すると共に、全国の研究機関への配布をおこなうことで研究の成果と課題を研究者間で共有できるようにした。また、その成果と含めた縄文時代の装身具に関するシンポジウムを1月に開催し、120名ほどの参加者をえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒスイとコハクを用いた装身具流通について各地域に於ける遺跡出土品の集成を引き続き進める。また材木遺跡の調査で判明したヒスイ代替を担った在地石材の利用実態についても検討を進める。現在、長野県(茅野市)と静岡県(静岡市)の2か所で、在地の緑色系石材の産地・産状を確認しつつあり、その縄文時代に於ける利用状況についての検討を進めている。また、材木遺跡の出土品については改めて製作工程の技術的分析(原石・分割・整形・研磨)を進めると共に、未知とされる鉱物学的な検討も予定している。 縄文時代中期末(4,500年)を境として、それまで単体・大型であった装身具類は1cm以下の小型玉類へと変貌を遂げる傾向が顕著である。こうした変化についての合理的な説明はなされていないが、墓への副葬状態の検討から、その背後に垂飾から連珠への変化があったと想定している。この変化は単に装身具の変化に留まらずに装身原理、装身具の佩用が複数人物や複数世帯へと変化した社会的現象として評価可能と予想しており、各地の墓とその出土品の検討を踏まえてこの問題の検討も実施してゆきたい。 今年度は東日本地域に於ける縄文時代装身具について、各地域の研究者を招聘してシンポジウムを開催したが、次回は西日本地域研の研究現状について焦点を当てたにシンポジウム開催を企画している。
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