2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the conservation of the earthen remains of Sannai Maruyama Site
Project/Area Number |
22H00742
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
石崎 武志 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 研究員 (80212877)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (50466645)
佐々木 淑美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (60637883)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 三内丸山遺跡 / 生物被害 / 土遺構の劣化 / 環境条件 / 保存対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、三内丸山遺跡の土遺構の屋内展示環境において、遺構面に発生するキノコ、カビや藻類等の発生に関して、周囲の温湿度環境、浮遊粒子の測定および、土遺構内の微生物叢の解析を中心に行った。浮遊菌数については、覆屋内のいずれの地点でも 好湿性カビ(PDA培地での菌数)と耐乾性カビ(DG18培地)の菌数が1,000 cfu/m3を超えた。一方、屋外の菌数もそれぞれ2,000、1,790 cfu/m3と比較的高い状況であり、外気に由来して屋内の菌数が高くなっている可能性もあることが確認された。 土遺構内の微生物叢の解析に関しては、全炭素(TC)およびリンは、上層から下層にむけて値が高くなる傾向があったが、全窒素(TN)は、層ごとに値に大きな傾向はなかった。真菌が炭素やリンを栄養素として消費する一方、植物等の光合成生物による供給がないため、TCやPが下層にむけて増加したと推察される。微生物分析の結果、真菌のバイオマスは上層から下層にむけて低くなり、表層から10~14 cm付近で0.0422 µg/g未満となり本分析での検出限界以下となった。真菌のバイオマスは酸素供給の多い表層で高い傾向にあり、14㎝より深い土壌中にはほとんど存在していないと考えられる結果が得られた。 また、三内丸山遺跡の屋外展示で行われている大人の墓などの土マウンドに関して、模擬マウンドを異なる強化剤で処理をした土で作成し、その劣化状況、またマウンド中の水分移動の変化に関して測定を行った。 この他、屋外の展示遺構の劣化原因の主な要因と考える凍結劣化現象の凍上現象のメカニズムに関して、実験結果のデータの解析を行い、凍結による膨張速度を凍結の進行速度と凍結面近傍での温度勾配との間の関係式を導く研究を行った。また、国内の遺跡で、土遺構の屋内展示、屋外展示の例を調査し、保存環境とそれらの土遺構の劣化状況との関係の調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 当初予定していた、内丸山遺跡の土遺構の屋内展示環境において、遺構面に発生するキノコ、カビや藻類等の発生に関して、周囲の温湿度環境、浮遊粒子の測定および、土遺構内の微生物叢の解析を行うことができた。また、三内丸山遺跡の屋外展示で行われている大人の墓などの土マウンドに関して、模擬マウンドを異なる強化剤で処理をした土で作成し、その劣化状況、またマウンド中の水分移動の変化に関して測定を行うことができた。この他、屋外の展示遺構の劣化原因の主な要因と考える凍結劣化現象の凍上現象のメカニズムに関して、実験結果のデータの解析を行い、凍結による膨張速度を凍結の進行速度と凍結面近傍での温度勾配との間の関係式を導く研究を行うことができた。また、国内の遺跡で、土遺構の屋内展示、屋外展示の例を調査し、保存環境とそれらの土遺構の劣化状況との関係の調査を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策に関しては、三内丸山遺跡で、生物被害状況調査を行う。ここでは、生物を採取し、正確な同定を行う。現地調査において目視等で同定が難しい場合は、微生物試料を採取し、DNA塩基配列解析を行う予定である。また、覆屋内で展示されている土遺構に発生するキノコ、カビ、藻類などの生育は、それを取り巻く温湿度などの微気象環境や空気中の胞子などの浮遊粒子数などに影響される。微気象環境の調査および空気中の浮遊粒子数測定を行い、微生物の成育に関する環境条件を明らかにする。 屋外で展示される復元土遺構の材料および方法について、強制劣化試験、屋外モデル試験、土遺構内の水分移動シミュレーション解析を行い、耐久性の高い適切な材料および方法の検討を行う。 屋外で復元土遺構の展示を行っている他の遺跡の復元土遺構の材料、方法およびその劣化状況に関して調査を行い、三内丸山遺跡との比較研究を行う。 遺構表面における塩類析出および藻類繁茂の抑制と除去に関する研究を行う。
|
Research Products
(2 results)