2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the structure and variability of temperature distribution and local wind systems in the Tokyo metropolitan area
Project/Area Number |
22H00756
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高橋 日出男 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (40202155)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 岳彦 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (10114662)
菅原 広史 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (60531788)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 都市気候 / 都市ヒートアイランド / 海陸風 / 首都圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては,研究目的のうち,1)南関東の陸風/山風の吹走と原田渦や気温分布との関係,ならびに2)夏季日中における風系と気温分布との関係について解析を進めた。 1)夏季夜間に関東地方内陸からの陸風/山風(以下,内陸風という)が東京都心を通過して東京湾岸まで到達する場合(到達日)と都心を通過せず東京湾岸に到達しない場合(非到達日)について,18年間の晴天弱風日から事例分類を行い,コンポジット解析によって風系と気温分布の時間変化を調べた。その結果,到達日には北関東からの内陸風が早く拡大し,関東地方西部から原田渦は南東進して都心付近に達していた。一方,非到達日には原田渦が埼玉県中央部を東進しており,北寄りの内陸風の拡大が不明瞭で,南関東では南西寄りの風系が終夜持続していた。両者ともに東京都心を中心とする高温域が現れるが,非到達日には卓越する南西風によって都心域の風下側(北東側)に高温域が拡大し,風上側(海側)の神奈川県東部では逆に低温となっていることや,北関東内陸部の高温が内陸風の拡大を抑制している可能性など,夜間の風系と気温分布との系統的な連関が見出された。 2)局地風系の出現が期待される晴天弱風日を抽出し,発散場に対する拡張EOF解析などの多変量解析を用いて関東平野における夏季日中の風系の類型化を行い,気圧傾度や気温分布との関係,各類型の出現頻度について検討した。A~Eの5類型に分類された日中の風系には一般場の気圧傾度との関係が認められ,AからEの順に,南寄り海風が卓越して風速も大きい場合から,東風が関東平野に広く卓越する場合に対応していた。また,海風前線の内陸への侵入や広域海風の発達はA,Bで早く生じ,これらの日には内陸部や鹿島灘沿岸で高温となっていた。このような日の夜間には,東京湾周辺で翌朝まで南寄りの風系が持続し,近年では出現頻度の増加傾向が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の解析において,2021年度まで気温鉛直分布を観測した温度プロファイラの1台に経年的なセンサの感度変化が認められた。そのため現在測器メーカにデータ補正を依頼しており,2022年度には都市境界層の気温鉛直分布に関わる本格的な解析には至らなかった。一方で,局地風系と気温分布に関する解析を前倒しして実施し,前述の風系場と気温分布との興味深い連関が得られたことなどから,全体としておおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度において,前述のような風系場と気温分布との興味深い連関が見出されたことから,今後も原田渦の挙動と各風系の拡大・後退との関係や関東平野の内陸・沿岸の気温差などとの関係について事例解析を含めてさらに解析し検討を進める。 気温鉛直分布を観測した温度プロファイラの1台に経年的なセンサの感度変化が認められたことから,現在測器メーカに補正を依頼している。これができしだい,冬季夜間における都区部西部の気温急変域と逆転層や局地風循環との関係については,都区部西部で逆転強度が大きい事例を抽出し,各事例ごとに逆転層上端の気温変動と地上風の風向風速との対応を,タイムラグを考慮した相関分析などによって調べる。また,東京の境界層構造に与える中部山岳の影響については,温度プロファイラの観測期間中における原田渦の影響事例を判別し,気象庁局地予報モデル(LFM)の初期値などを用いて気温の鉛直構造と関東平野の風系や気温分布の立体構造との関係を解析し検討する。以上の解析作業にあたり,個々の事例の特徴をよく観察し現象の的確な把握に常に留意する。 また,首都圏約120箇所の気温観測システム(広域METROS)の観測データ整理(2006年度以降)を行い,過去17年間に蓄積したデータの品質管理に着手した。今後は,過去のデータも用いて首都圏に特有の気温偏差パターンとその出現特性を多変量解析によって明らかにし,ヒートアイランド形成要因の解明に向けた取り組みを行う予定である。
|
Remarks |
図書分担執筆 高橋日出男 2023. 気候要素と気候因子.pp.116-117,公益社団法人日本地理学会編『地理学事典』,丸善出版,818ページ. 高橋日出男 2023. 平成25年台風第26号に伴う伊豆大島の豪雨.pp.103-115,鈴木毅彦・市古太郎編著 『伊豆諸島の自然と災害』,古今書院,256ページ.
|