2022 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental Psychology for Acceptance Factors of the Japanese Plea Bargaining System
Project/Area Number |
22H00793
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
若林 宏輔 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40707783)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緑 大輔 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (50389053)
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
大角 洋平 愛知学院大学, 法学部, 講師 (10923542)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 司法取引 / 捜査・公判協力型 / 自己負罪型 / 他者負罪型 / 虚偽自白 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本独自の制度である捜査・公判協力(他者負罪)型司法取引を対象とし、刑事法学上の理論研究および実務調査をもとに仮説を構築し、心理学の実験・調査手法による同仮説の科学的実証を行う。目的は1) 他国の「自己負罪型」司法取引制度と、日本の「他者負罪型」司法取引に類する制度の運用において生じている危険性の比較法学的研究、 2)心理学研究手法を用いた「他者負罪型」司法取引状況下でのリスク発生率とメカニズムの解明を通し、3)日本版司法取引制度の運用について客観的かつ科学的エビデンスを提出し、それに基づく制度設計・運用について提言することであった。 まず初年度の研究計画としては、1)米国・司法取引制度の理論・実務調査や米国研究者らへのヒアリング、2)日本版司法取引である捜査・公判協力型(他者負罪型)司法取引場面の取引受諾についての心理学調査による基本データ取得を計画していた。とくに2)に関して、【調査1】場面想定質問紙法を用いて罪×罰×誘引を操作した司法取引場面の基礎的データを複数取得した。結果としては、米国等の自己負罪型と比較して他者負罪型では、1)自らが犯罪を行っていることが明確な有罪条件では取引受諾率が同等に高い、2)一方自らが犯罪を行っていないことが明らかな無罪条件では取引受託率は低い、しかし3)無罪条件であっても取引受諾(虚偽自白)が一定数存在することがが明らかとなった。また【調査2】欧米の自己負罪型と日本の他者負罪型証言の比較を同時に行う実験・調査も実施したところ同様の結果が得られた。加えて【調査3】裁判員を想定した第三者による自己負罪型と他者負罪型で得られた証言の信用性評価について検討したところ、他者負罪型よりも自己負罪型において供述の信用性および被告人の有罪判断が高いことが示された。ただし他者負罪型で証言を行った供述者に対しても有罪とする傾向も明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画上では、22年度には【調査1】日本の捜査・公判協力型司法取引の状況を想定した心理学調査を2つ予定していたが、法学者・法実務家らとのミーティングや対話を通して、【調査2】欧米の自己負罪型と日本の他者負罪型証言の比較を同時に行う実験・調査の実施が重要であると確認されたため、これらの調査も実施した。また【調査3】の裁判員を想定した第三者による証言評価についても調査を実施した。この点から当初の計画以上に研究課題は進捗していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究計画では、1)欧州・司法取引制度の理論・実務調査や各国研究者らへのヒアリングと、2)捜査・公判協力型(他者負罪型)司法取引に関連する要因操作データ取得を予定通りにすすめる。特に2)に関しては質問紙調査を継続的に行い、とくに他者負罪型で被疑者が証言する「他者との関係」を各種操作(他人・知人・上下関係等)した調査を実施する。また質問紙調査だけではなく3)他者負罪型司法取引の心理学実験によるより実際の環境下に近づけた基礎的データ取得も予定通り行う。
|