2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H00836
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 泰裕 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30332703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大城 淳 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (00713067)
高橋 孝明 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (30262091)
岡本 千草 中央大学, 経済学部, 助教 (30882691)
田渕 隆俊 中央大学, 国際経営学部, 教授 (70133014)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 経済政策 / 移民 / 社会的統合 / 都市経済 / 空間経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、移民を受け入れる国において、受け入れ国におけるネイティブなどの多数派と、移民などの少数派とが相互にお互いを受け入れるかを分析できる理論的枠組みを構築した。その中で、世代間の影響も考慮し、前の世代が受け入れていたほど次の世代も受け入れやすくなるという性質を組み込み、どのような条件が、お互いを受け入れる方向に向かわせるのかを分析した。 分析の結果、多数派の受け入れ姿勢は、少数派の社会的統合(多数派をどの程度受け入れるか)の度合いに対して逆U字を示す、つまり、少数派があまり社会的に統合されていない間は、その統合に伴い多数派はより少数派を受け入れるようになるが、少数派が十分統合されるようになると、さらなる統合は多数派の受け入れ姿勢を損なうことが分かった。この結果は、欧州のように移民を多く受け入れ、社会的に統合する努力を続けてきた国において、移民排斥の動きが生じたことを説明できるという意味で重要である。 また、多数派の受け入れ姿勢は、少数派に意図せざるメリット(外部経済)をもたらすが、少数派の社会的統合の努力は必ずしも多数派に外部経済をもたらさないことも分かった。この結果は、多数派の受け入れ努力を促す政策は常に正当化可能である一方で、少数派の社会的統合を促す政策は、多数派の反応を考慮する必要があり、常に正当化できるとは限らないことを示している。 いずれの結果も、近年外国人居住者が増加し、少子化への対策の一環としてさらなる外国人受け入れが議論される日本にとって重要な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた理論的枠組みの構築が進み、実証研究を行える段階に至った。また、予定通り、来年度は実証研究の枠組みの構築およびデータ収集を行える見通しであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
移民の社会的統合についての既存研究を展望し、本年度に構築した理論分析の結果を実証するための実証的枠組みを構築する。また、それに必要なデータを収集し、予備的な実証作業を行う。データ収集に際しては、日本はまだ移民の数が少なく、実証に適したデータが利用可能でない可能性が高いので、欧州やアメリカのデータも視野に入れる。
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Research Products
(6 results)