2023 Fiscal Year Annual Research Report
不感蒸散を再現した乳児型局所発汗サーマルマネキンの開発
Project/Area Number |
22H00949
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
深沢 太香子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (90423574)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 乳児 / 乳児の安全 / 発汗サーマルマネキン / 体温調節 / 不感蒸散 / 発汗 |
Outline of Annual Research Achievements |
不感蒸散も再現可能な乳児型発汗サーマルマネキンの構築を最終到達目標とし,本研究では,乳児の不感蒸散を再現する乳児人体局所を模擬した局所発汗サーマルマネキンを開発することを目的として実施している. 二年度目における研究実績は,(1)特殊金属板の水に対する諸性能評価と,(2)不感蒸散の再現に適した特殊金属板の性能評価である.以下に,具体的に記す. (1)特殊金属板の水に対する諸性能評価:多孔質板の保水性は,板厚との相関性よりも,板中の空隙率との間に高い相関性が認められた.さらに,人体の角質層と同等の保水性(30%程度)を示すことのできる多孔質金属板は,板中の空隙率が70%から80%程度であることがわかった.そこで,空隙率70%から80%の多孔質板を対象として,板重量30%の水を付与した際の水拡散性を,付与した水の蒸発量分布より評価した結果,蒸発量の変動係数は,0.5(-)から1.7(-)と大きかった.特に,板厚の増加に伴って,変動係数は大値を示し,濡れ広がりが不均一となりやすいことがわかった.これらの結果を踏まえて,保水性と水拡散性が良好な多孔質板4種を選定した. (2)不感蒸散の再現に適した特殊金属板の性能評価:不感蒸散の再現への適性を評価するために,不感蒸散再現装置を作製した.装置中,多孔質板表面を乳児人体表面とし,板には乳児人体と同温の水が断続的に供給された.同時に,多孔質板は,その表面温度が32-33℃の一定値を維持するよう,下部に設置した電熱ヒータにて制御された.選定された多孔質板からの蒸発量制御範囲は,3-12 g/m2hであった.この蒸発量範囲は,乳児人体の全身および体幹や四肢とその末梢からの不感蒸散量に該当する.このことから,選定4種の多孔質板は,乳児人体の不感蒸散を十分に再現し得ることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,乳児の不感蒸散を再現する乳児人体局所を模擬した局所発汗サーマルマネキンを試作することである.研究初年度では,模擬装置作製に係る多孔質板パイロットタイプの性能評価を行った結果,当初の予定に反して,水拡散性や蒸散性が著しく不安定であることが判明した.そこで,研究二年目にも,多孔質板の作製を継続し,改良版多孔質板は,模擬装置に適した保水性と水拡散性を示すことを確認した.そして,乳児不感蒸散量の再現性を検討したところ,この改良版多孔質板は,乳児人体の全身および局所からの蒸散を再現し得ることを確認した.これらの検証結果を受けて,現在,乳児における発汗の再現装置の試作が進められていることから,おおむね順調であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
乳児模擬人体局所からの発汗を再現する装置を作製と再現性を検証する.その後,不感蒸散と発汗を同一装置内で再現する乳児模擬人体局所の試作に取り掛かる.試作では,重量法や蒸散量,発汗量の計測結果から,乳児人体との整合性の検討を繰り返しながら,改善・改良する.一連の研究成果について,関連の学会にて適宜発表し,装置の改良に反映させる.
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