2022 Fiscal Year Annual Research Report
政策的レリバンスと因果推論を重視した教職選択・教員供給に関する総合的実証研究
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22H00963
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋野 晶寛 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (60611184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町支 大祐 帝京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40755279)
川上 泰彦 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70436450)
神林 寿幸 明星大学, 教育学部, 准教授 (70785279)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 教員政策 / 教員供給 / 教職選択 / 教員の労働環境 / 教員人材確保 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1)教員供給・教職選択に関する2次データの分析、2)教員供給構造・労働環境に関する分析、3)大学在学者を対象とした調査(予備調査)および若年大卒者を対象とした大規模オンライン調査を行った。 1)については、主に研究代表者による。まず国際学力調査の個人票データのうち将来の就業希望職業、認知的能力、非認知的能力・態度に関する情報を活用し、教職志望者と他の専門職志望者の能力分布の比較、教員人材の質的確保の現況に関する多国間比較を行った(紀要論文において成果発表)。また、国レベルの労働環境変数(給与水準・労働負荷等)のデータと組み合わせ、認知的・非認知的能力双方の面での優秀層に教職参入を促す政策的要因について計量的実証分析を行い、教職に必要とされる非認知的能力の同定や性別の相違に依存するものの、給与水準・労働時間の改善により、能力高水準層の教職志望率が一定程度上昇するという結果を得た(学会報告において成果発表)。 2)については、主に研究分担者による。教員供給の構造変化、業務負荷、転任異動後の教員の社会化等、労働環境に関する基礎的な分析を行った(学会誌論文・紀要論文3件、学会報告2件において成果発表)。また分析で得られた知見は次年度調査の調査項目に反映させる予定である。 3)について、大学在学者を対象とした調査では、次年度の本調査に向けた予備調査として位置づけ、キャリア・ライフコース選択、教職観および労働関係法制の認識、認知的・非認知的能力に関する質問項目の検討を行った。若年大卒者(教職課程履修経験のある者)を対象としたオンライン調査では上記内容に現職における主観的厚生の項目を加え、データを収集した。このデータに関する分析・成果発表は2023年度に順次行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の進捗に関しては、概ね順調な進展があったと評価できる。本研究課題の初年度の作業として計画していた作業は、1)教職選択に関わる2次データ分析、2)教員供給構造・労働環境に関する分析、3)大学在学者を対象とした教職選択に関する調査・予備調査実施である。 1)に関しては、主に研究代表者によってデータ整理・分析が進められ、論文・学会報告によって成果発表がなされた。「教員の質」に関わる教職志望者の特質が明らかにされるとともに、本研究の主題である政策的要因が教員供給の量・質に与える影響について一定の知見が得られ、次年度以降の更なる深化・展開が期待できるものとなった。 2)に関しては、主に研究分担者によって教員供給の構造変化、労働環境に関して分析が行われ、論文・学会報告によって成果発表がなされた。得られた知見については次年度以降の調査内容へ反映する。 3)に関しては、大学生を対象とした教職選択に関する調査については、関東・九州の大学において予備調査を行った。今年度以降に実施する本調査に向けて、教職観やキャリア・ライフコース選好に加え、様々な養成・採用・労働条件下での仮想の教職選択に関する項目等、質問事項の精選などの検討を行うことができた。加えて若年大卒者・大学院修了者(在学時に教職課程の履修経験者)を対象としたオンライン調査を実施した。この調査は2)の在学者調査を補完するものであるが、当初想定よりも大規模なサンプルサイズの確保が可能となったことで今後の研究の進展が見込まれるものとなった。採取したデータの整理を経た本格的な分析は2023年度以降に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について、2023年度の基本的な方向性としては2022年度の作業の継続となり、以下の4点から成る。 まず第1に教職選択に関する2次データ分析であり、2022年度に行った研究について近く公表予定の国際学力調査の直近の調査回のデータを加えた再分析を行い、加えて、東京大学社会科学研究所データアーカイブ中の高校生・大学生の進路選択に関わる調査データを活用し、都道府県レベルデータを組み合わせながら教職選択・教員養成学部選択に関するミクロデータによる計量分析を進める。 第2は、大学既卒者・大学院修了者を対象とした調査データの分析である。2023年2月~3月にかけて実施したオンライン調査データについて、データ整理を経て分析を行う。質問項目が多岐に渡ることから、代表者・分担者の複数人で多角的な分析を行い、順次、学会報告・論文投稿を通じて成果発表を行う。 第3は、大学在学生を対象とした教職選択に関する質問紙調査の実施・分析である。2022年度の予備調査をふまえて質問項目の改良を経て、関東・関西・九州の大学における本調査を実施する。可能であれば東北・北海道・中部エリアの大学関係者に調査協力を依頼し、調査対象の拡大を図るとともに、十分なサンプルサイズが予算内で確保可能であれば、2024年度以降にオンライン調査による補完も行いたいと考えている。 第4は、現職教員を代表者としたインタビュー調査の実施である。学校種・教員経験年数の異なる現職若手~中堅教員および教職大学院所属で現職教員と交流の多い研究者に対してインタビュー調査を行い、日々の業務遂行(教科指導・生徒指導)および長期的な力量形成において基盤となる・重要であると認知している要素(教職に就く前の時点での能力・経験)の情報を得る。
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Research Products
(8 results)