2023 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児特有の感覚特性をクラスタ解析するAIシステムの開発
Project/Area Number |
22H00996
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nippon Bunri University |
Principal Investigator |
宮崎 仁 日本文理大学, 保健医療学部, 准教授 (20550396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 史哲 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (80550392)
岩藤 百香 川崎医療福祉大学, 医療福祉マネジメント学部, 講師 (80612986)
大姶良 義将 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (60910338)
小田桐 早苗 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (10461245)
難波 知子 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (30441489)
武井 祐子 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (10319999)
森戸 雅子 川崎医療福祉大学, 保健看護学部, 教授 (50389029)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感覚特性 / 自閉スペクトラム症 / 家族支援 / 情報共有 / アプリ開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,感覚に特性をもつ自閉スペクトラム症(以下,ASD)児の日常生活での苦痛や困難についての理解の難しさや専門職である支援者の情報共有の難しさに対して,ASD児の大域的な情報を集める手法を確立し,集められた大域的な情報を機械学習で解析するシステムを開発することを目的としている. 本年度は,ASD児の感覚特性による困難や対処について情報を記録し,収集した情報を整理する感覚特性サポートアプリ「YOUSAY」を2023年7月にリリースし一般公開した.YOUSAYはASD児のプロフィールや感覚特性による困難や対処を記録し,電子的に記録された情報から検索や一覧表示して情報を整理することができる.また,記録された情報をデータベースに登録し,信頼できる支援者と家族間で情報をオンライン共有できる.またYOUSAYに記録された事例情報のうち提供を受けた情報を基に,感覚特性による困りごとを相談できるチャットbotを開発した.このチャットbotは,ASD児の感覚特性を刺激する物体を学習しており,困りごとが起こった場面を撮影し写真を送信することで,対象である物体とその物体にまつわる事例が表示される.ICT機器に長けていない利用者でも,簡単に自閉症児の感覚を刺激する物体を明らかにし,その事例情報を得ることができた.一方で,実用化のためには検出対象の数や事例の数を増やすことが要望として挙げられた.また,言葉によるチャットbotへの相談は,現在は定型文のみを受け付ける仕様となっている.自然言語処理を組み込むことで自由な言葉で相談できるシステムへと改良を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は,ASD児の感覚特性による困難や対処について情報を記録し,収集した情報を整理する感覚特性サポートアプリ「YOUSAY」をリリースし,一般にモニター調査を行う予定であった.モニター調査の協力者は,これまでの自閉症学会のシンポジウム参加者や,これまでに協力依頼を行っていたASD児の家族,関連施設および専門職の支援者である.また,わかりやすい形で事例情報を提供するシステム開発を行う予定であった. 本年度は研究計画通り遂行しており,順調に進展している.感覚特性サポートアプリ「YOUSAY」を2023年7月にリリースし一般公開し,当事者やその家族からのモニター調査を行った.感覚特性をもつ人たちにも優しいインタフェースとなるよう工夫しており,インタフェースへの評価は高かった.また機能についても追加してほしい機能や改善が求められた機能もあった.YOUSAYに記録された事例情報のうち提供を受けた情報を基に,感覚特性による困りごとを相談できるチャットbotを開発した.収集した事例の中から物体検出が可能と考えられる18種類を対象に,YOLOv5モデルをベースに機械学習による転移学習を行い,自閉症児の感覚を刺激する物体を検出できるAIモデルを開発した.開発したAIモデルを2つのアプリケーションとして実装した.1つはスマートフォンにアプリとして実装し,スマートフォンのカメラを向けると,自閉症児が過剰反応を起こす可能性のある物体が矩形で囲まれ表示される.もう1つは,LINE botとして実装した.場面を写真撮影しLINEに送信することで,対象である物体とその物体にまつわる事例が表示される.ICT機器に長けていない利用者でも,簡単に自閉症児の感覚を刺激する物体を明らかにし,その事例情報を得ることができた.一方で,実用化のためには検出対象の数や事例の数を増やすことが要望として挙げられた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,感覚特性サポートアプリ「YOUSAY」のモニター調査を行い,得られた事例情報を基に,感覚特性による困りごとを相談できるチャットbotを開発した. 最終年度では,「YOUSAY」の試用範囲を拡大してモニター調査を引き続き行い,さらなる改良を進めていく.また,追加で得られた情報を組み込み,要望として挙げられた検出対象の数や事例の数を増やすことに対応する.また,言葉によるチャットbotへの相談は,現在は定型文のみを受け付ける仕様となっている.例えば,スーパーマーケットに出かけた際に子どもが激しく嫌がった場合,何が原因で嫌がっているのか、親は子どもに対して何をすべきなのかをその場で判断することは難しい.現在の仕様では,撮影した写真に特定の物体が存在しなければ回答を得ることができない.また,言語での相談も定型文にしか対応しておらず,個別の問題には対応できない.そこで,自然言語処理を組み込むことで,「スーパーマーケットに出かけたら嫌がったけれどどうしてだろうか?」といった問い合わせが可能となる.自由な言葉で相談できるシステムへと改良を進めることで,YOUSAYの事例情報,文献での事例情報,インターネットから収集した事例情報から適切な回答を行えるシステムを開発する予定である.
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