2022 Fiscal Year Annual Research Report
日本において「困難な歴史」を教える道徳教育カリキュラムの開発とその実践への支援
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22H01019
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
原口 友輝 中京大学, 教養教育研究院, 教授 (70630995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
空 健太 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (30548285)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 困難な歴史(Difficult History) / 道徳教育 / 社会科教育 / 道徳科 / 現代的な課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,社会的なトラウマをもたらす過去の物語である「困難な歴史(Difficult Histories,Difficult Past)」を,日本の教育現場で安全かつ効果的に扱う方法を明らかにすることである。 本年度は,共同研究者との毎月の定期的なミーティングに基づき,主に次の二点を行った。 第一に,国内外の「困難な歴史」研究に関する先行研究を道徳教育と社会科教育それぞれの観点から分析した。そして「困難な歴史」が現代の民主主義社会において重要な課題であり,道徳科において現代的な課題として取り上げる意義があることを,日本道徳教育学会の学会誌において指摘した。具体的には次の三点の意義を指摘した。すなわち,「困難な歴史」を教材として取り上げることで,過去の人々の行動等について,状況を踏まえた多面的・多角的な考察を行い,生徒自身への内省を含んだ道徳的な判断をするよう促すことが可能である点,生徒が現代的な課題に取り組む際に,事実と根拠に基づいた主張をするよう教育できる点,生徒の自己理解の深化につながる点である。また,「困難な歴史」を教材として取り上げる際には,人間の行動に焦点を当てた心理学的知見の活用が有効と考えられる点もあわせて指摘した。 第二に,日本の教師への質問項目を作成した。その際,他国との比較も可能なように,海外の同様の調査に関する先行研究を参考にした。また作成した質問項目によりプレ調査を実施し,修正すべき項目について検討した。あわせて,「困難な歴史」に関する意識や実践については,特に学校教育現場の教師にとっては質問項目によって回答が困難となることが予想されるため,調査に当たって配慮すべき点について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の「困難な歴史」研究に関するレビューを行い,その成果の一部を論文としてまとめ公表することができた。また2023年度に行う予定の調査調査の項目もおおよそ完成している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.本年度作成した調査項目を修正し,研究代表者の所属する学内倫理審査委員会の審査を経たうえで,2023年度中に調査を行い,その結果を公表する。2.「困難な歴史」を扱う海外のカリキュラムと,そのカリキュラムに基づく授業の実際を調査する。3.海外の「困難な歴史」カリキュラムの分析を通して,日本に応用可能なものを見出す。4.日本の道徳授業ではこれまで人物教材が取り上げられてきたことから,道徳授業における人物の取り扱いと「困難な歴史」実践の文脈における人物の取り扱いとを比較することで,「困難な歴史」研究・実践に基づいた人物教材の取り扱いの意義を明らかにする。
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