2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H01075
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上出 寛子 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (90585960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 虎 山口大学, 時間学研究所, 准教授 (80600519)
新井 健生 電気通信大学, 脳・医工学研究センター, 客員教授 (90301275)
坂田 信裕 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50362132)
笠木 雅史 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (60713576)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プライバシー / 人間の尊厳 / ロボット / ヒューマン・ロボット・インタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
家庭内で人間のサポートを行うサービスロボットの場合、ユーザの視点で侵害されうるプライバシーとは何かを明らかにすることを目的に、調査を行った。GDPRや欧州の文化・司法が情報プライバシーを理解するために必要な基本的概念として、人間の尊厳がある。ロボットが侵害しうるプライバシーに関連する人間の尊厳の問題としては、従来、データ保護だけでなく、物理的安全や心理的安心の保護、自律性の低減や、人間関係の希薄化、欺瞞の問題など、多様な側面があることが理論的に指摘されてきた。そこで、本研究では、ロボットとの関連から、これらのプライバシーを人間の尊厳の視点に基づき定量的に評価する尺度を開発することを目的とした。 日本人3380名(平均年齢44.34, SD=16.83, 男性1528名、女性1852名)に対して、ロボットとのインタラクションにおいてどのようなプライバシー問題を懸念するのか調査をした。その結果、懸念されるプライバシーには大きく2つの因子があり、「ロボットを使うことで自分の家庭内での立場や役割が薄れてしまうかどうか」「ロボットを使うことで自分自身がロボット的にならないかどうか」「ロボットが自分の信念を変えたりしないかどうか」「ロボットを使うことが自分の孤独感に影響するかどうか」と言った人間の尊厳の根幹に関わる問題(α=.94)、「事故の場合の責任の所在が明確になっているかどうか」「ロボットが物理的に安全かどうか」「メーカー側がデータ保護に可能な範囲の努力を行なっているかどうか」「ロボットがコントロール不能にならないかどうか」と言った、ロボットの技術・サービスの安全性に関わる問題(α=.91)が存在することが明らかとなった。 これらのロボット利用時に関するプライバシーの問題について、次年度以降、実験的に検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は、プライバシーに関する心理学・哲学・工学での最新の知見をレビューし、それらの知見に基づく調査を実施することで、プライバシーに関する評価尺度を構築するとともに、次年度へ向けた基礎的な知見を得ることをも目的としていた。プライバシーに関しては人間の尊厳という概念が重要に関わってくることや、これに影響する技術的なデータ保護・ユーザ支援の運用内容について知見を整理するとともに、心理学的にユーザ視点でのプライバシー評価を行う尺度も作成することができた。したがって、今年度で実施する内容について計画通りに遂行できたため、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に得られたプライバシー調査の結果に基づき、2年目以降に具体的な実験をデザインし、実証的な検討を行う。哲学的な概念分析においては、プライバシーの構築要素は多岐にわたる一方で、ユーザ視点での評価においては、より抽象的なレベルでの評価がなされていることが明らかとなった。また、工学・情報技術は、それぞれのプライバシーの概念的な要素を個別に促進するとももに、最終的には、ユーザ視点での評価に影響すると考えられる。これらのメカニズムについて、次年度には、実機ロボットが家庭内でユーザを支援する状況を再現し、参加者とのインタラクション実験を行うことで、検討を行う。
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