2022 Fiscal Year Annual Research Report
3次元トポロジーへの応用を目指した離散群の表現空間と大域幾何の研究
Project/Area Number |
22H01125
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
大鹿 健一 学習院大学, 理学部, 教授 (70183225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮地 秀樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40385480)
馬場 伸平 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40822870)
金 英子 大阪大学, 全学教育推進機構, 教授 (80378554)
森藤 孝之 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (90334466)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 3次元多様体 / 双曲幾何 / 曲面バンドル |
Outline of Annual Research Achievements |
Haken多様体の一意化定理の証明の一部として,Thurstonにより主張されていたが,現在まで証明がされていなかったbounded image theoremの完全な証明を大鹿がCyril Lecuireとの共同研究により完成させた.そこではこれまで蓄積されたKlein群の変形空間の理論を全面的に使う.特にKlein軍の列の収束,発散のみならずgeometric limitがどのようになるかということを無限遠構造に対して新しい不変量を定義することにより完全に解明することができた. 曲面バンドルは3次元多様体における重要な例であったが,virtual fibre予想がAgolにより解決されたことにより,特に双曲的曲面バンドルは3次元多様体全体を理解する上での鍵となっている.大鹿は曲面バンドルの理論についての総合論文を執筆し,さらに曲面バンドルの体積分布についての予想を提起した.曲面バンドルの研究は金により精力的に進められた.金はAgolにより定義されたpseudo-Anosov写像のstable laminationについてのmaximal splittingという操作に注目し,そこで現れる周期性をAgol cycleという言葉で定義し,川室との共同研究で,Agol cycleを実際に計算する方法を与えた. 森藤は結び目のファイバー性を特徴づける定理であるFriedl-Vidussiのねじれアレキサンダー多項式の消滅定理を具体的に与える表現を組織的に構成した. 馬場は大鹿との共同研究でending laminationとbending laminationの同時実現の仕事を完成させるとともに,Subohjoy Gupta氏との共同研究で,Teichmuller測地線の挙動に関しての研究を行った.宮地はTeichmuller空間論の複素解析的側面の研究をさらに進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年においては,コロナ禍の影響が残り,海外での共同研究に支障が生じたが,2023年になり,研究の遅れを取り戻すことができた.大鹿はフランスにおける共同研究を実地で行うことができた他,フランス,トルコ,インドなどでの国際研究集会での研究成果の発表も行うことができた.また研究成果を論文にする作業も順調に進んでいる.金はアメリカの大学に所属している川室との共同研究をスムーズに行うことができるようになった.またこの科研費を財源の一つとして毎年組織している国際研究集会である「Topology and geometry of low-dimensional manifolds」は2022年度は奈良女子大で対面で開催をすることができ,日程としてはこれまでより短くせざるをなかったが,今後の活動への弾みとなった.2023年は島根大学で通常の日程で開催をすることができた.今後は国際交流も通常の状況に戻ると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究は前半コロナ禍の影響を受けて,計画より遅い研究遂行となってしまったが,2023年度まで繰り越すことにより,初年度の計画はほぼ実行することができた.これにより,特に3次元双曲多様体のThurstonプログラムの重要なステップであったbounded image theoremの完全な証明を完成させることができた.この研究には最新のKlein群論のテクニックを駆使しているそこで元々のThurstonの理論的枠組みで,bounded image theoremをどのように証明するかという問題の解決には至っていない.これに取り組むためには,broken windows only theoremと呼ばれる非圧縮境界を持った3次元多様体の双曲構造の退化を幾何学的に記述する結果を使う必要がある.これは双曲構造の退化をR-treeへの群作用で記述するいわゆるSkoraの定理の3次元版とも深く関わりがある.これらの問題は大鹿の次年度の研究テーマとなる.Thurstonの時点でわかっていたこととわかっていなかったことを文献的に明らかにしつつ研究を推進する予定である. 金の研究に現れたAgol cycleはsurface bundleの幾何的構造,特にThurstonノルムの振る舞いと深く関係があることが期待される.次年度以降大鹿と金が共同してこの問題に取り組む予定である. 大鹿と馬場はbending lamination,ending laminationの実現問題をSchottky空間の場合に考察する予定である. Topology and goemetry of low-dimensional manifoldsの研究集会は,今後もフランスからの研究者を招いて,日仏を軸とした国際研究集会として開催する予定である.
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