2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis, geometry and their interplays on fractals and stochastic processes on them
Project/Area Number |
22H01128
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶野 直孝 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (90700352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Croydon David 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (50824182)
中島 誠 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (60635902)
田中 亮吉 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80629759)
白石 大典 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00647323)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | フラクタル上のポテンシャル論 / 2次元一般化Sierpinski carpet / (劣)ガウス型熱核評価 / ランダム媒質中の確率過程 / ランダムフラクタル / スケール極限 / 離散群上のランダムウォーク / 調和測度 |
Outline of Annual Research Achievements |
梶野はフラクタル上のラプラシアンに対する課題(4)「領域上の調和測度」・(5)「エネルギー測度」に関連してMathav Murugan氏(UBC)と共同研究を行い,ある程度広い範疇の2次元一般化Sierpinski carpetとその上の標準Dirichlet形式に対し次の結果を得た:自然な部分領域上の調和関数の境界付近での減衰の速さの評価を与えるとともに,さらにそれを用いて「ガウス型熱核評価が成立するように距離およびDirichlet形式の参照測度を変更することは,距離としてEuclid距離と擬対称なものを考える限りは不可能である」ことを証明した. Croydonはフラクタル的なスケール極限を有するランダムグラフにおけるランダムウォークについて研究し,福島竜耀氏(筑波大学),Stefan Junk氏(東北大学)との共同研究で1次元Mott variable-range hoppingと呼ばれるランダムウォークがフラクタル的なスケール極限を持つことを証明した. 白石もCroydonと共同研究を行い,4次元単純ランダムウォークの軌跡の上を走るランダムウォークのスケール極限の存在を証明するとともに,4次元単純ランダムウォークの軌跡の構造を反映する種々の量の解析を行った. 中島はランダム媒質中のピニング模型およびディレクティドポリマーの基準となる確率過程が強再帰的な場合の自由エネルギーの高温度での挙動の解析を行い,先行研究で埋められていなかった部分を埋めた.また1点と相互作用を持つようなSchrodinger方程式に対応する熱方程式とそれに対応するFeynman-Kac公式の類似を発見した. 田中は離散群上のランダムウォークについてノイズ鋭敏性の研究を進め,調和測度あるいはエキスパンダー族の混合時間との新しい関わりを観察するとともに,一部成果を論文にまとめ公表,投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
梶野がMurugan氏との共同研究で得た結果は,2022年度当初にはごく一部の具体的な2次元一般化Sierpinski carpetに対し てしか証明できていなかった「ガウス型熱核評価の実現不可能性」をかなり広範な2次元一般化Sierpinski carpetへと拡張するものであり,この性質が決して稀なものではなく多くの自己相似フラクタルで成立することを示唆している点で重要である.またこの結果は先行する梶野とMurugan氏の共同研究における重要な未解決問題を広範な例に対し解決するものという位置付けであり,この点でもその重要性は高い. Croydon・中島・田中・白石も関連する研究課題について精力的に研究を行うとともに,論文の公表および研究発表も着実に行っており,本科研費研究課題の目的は十分に果たせていると評価できる.研究計画調書に記した課題(1)-(7)のうち,梶野の研究は課題(4)「領域上の調和測度」・(5)「エネルギー測度」の,Croydon・白石の研究は課題(2)「ランダムフラクタルにおける熱核評価」・の,中島の研究は課題(6)「フラクタル上の拡散過程を土台にした統計物理モデルの解析」の,田中の研究は広い意味で課題(4)「領域上の調和測度」についての理解をそれぞれ深めるものと言える.課題(1)「熱核評価の特徴付けや安定性についての一般論」,課題(3)「拡散過程の標本路の大域構造」,課題(7)「自己等角フラクタル上のラプラシアン」については2022年度の研究活動で網羅できているとは言い難いものの,いずれの課題も解決に相応の困難を伴っているのは当初からの見込み通りであり,目立った進展のない課題があることは止むを得ない. 以上の経過から,全体として研究は概ね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の梶野は,2次元一般化Sierpinski carpetにおける自然な部分領域上の調和関数の境界付近での減衰の速さの評価および「ガウス型熱核評価の実現不可能性」の結果を速やかに論文にまとめ投稿できるよう努力する. また課題(1)「熱核評価の特徴付けや安定性についての一般論」・課題(2)「ランダムフラクタルにおける熱核評価」に関して,Murugan氏によるプレプリント [arxiv:1809.00767] の結果をランダムフラクタルにも適用可能な形に改良することを目標に検討を進める. フラクタル上のラプラシアンに対する課題(4)「領域上の調和測度」についても,調和解析・ポテンシャル論の手法による詳細な解析が行えないかをMurugan氏による最近のプレプリント [arXiv:2304.03908] の結果も参考にしつつ検討する. さらに課題(7)「自己等角フラクタル上のラプラシアン」については,梶野のこれまでの研究における手法の応用により単純曲線でないフラクタルやランダムな単純フラクタル曲線の上に自然なラプラシアンを構成できないかを,自己等角フラクタルに関する先行研究を精査しつつ検討する. その他,研究計画調書に記した課題(1)-(7)および関連する新たな研究課題について,梶野および研究分担者のCroydon・中島・田中・白石がそれぞれ引き続き国内外の研究集会に出席して近年の研究の進展に関する情報の把握に努めるとともに,Croydon,中島,田中,白石と梶野の間で必要に応じて研究打合せを行うことにより解決に向けて努力する.
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Research Products
(30 results)