2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H01133
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井口 達雄 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (20294879)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 水の波 / 内部波 / 変分構造 / 柿沼モデル / 適切性 / ハミルトン構造 / 進行波 / 極限波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,(i) 海岸工学の分野で提唱され,水の波の基礎方程式系の変分構造を利用して導出されたモデル方程式の数学解析,および (ii) 船舶などの浮体が水面上にある場合の流体‐構造連成問題の数学解析という二つの解析を主軸としている. (i) に関連して,水の波の内部界面波に対する柿沼モデルの適切性の研究をレンヌ大学(フランス)の Vincent Duchene 氏と,水の波の表面波に対する磯部‐柿沼モデルの進行波解の大域構造の研究をルンド大学(スウェーデン)の Evgeniy Lokharu 氏と共同で行った.また,(ii) に関連して,流体‐構造連成問題に対する浅水波モデルの適切性の研究をボルドー大学(フランス)の David Lannes 氏と共同で行った.主要な研究方法は研究代表者および共同研究者が行う手計算であり,適宜,電子メールやZoomを用いて進捗状況の報告や研究討論を行った.なお,これらの研究は現在進行形であり,来年度も引き続いてこれらの共同研究者と研究を進める. これらの研究の中で今年度大きな研究成果が得られたのは,水の波の内部界面波に対する柿沼モデルの適切性の研究である.柿沼モデルに対する物理的に自然な安定性条件を定式化し,その仮定の下で初期値問題が時間局所的に適切であることを証明した.本来,非適切であるはずの内部界面波に対して安定領域が存在するのは驚きであるが,これは柿沼モデルが物理的に自然な形で高周波領域を切断していると理解される.さらに,柿沼モデルがハミルトン構造を持つことを示し,そのハミルトニアンおよび正準変数を柿沼モデルの変数で書き下した.これらの成果は,研究代表者が過去に水の波の表面波に対する磯部‐柿沼モデルに対して導いていた成果の内部界面波への拡張と見なすことができる.これらの成果は1編の学術論文としてまとめ,学術雑誌への掲載が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに研究は進展している.水の波の内部界面波に対する柿沼モデルの適切性の研究に関しては学術論文にまとめるまでの成果が得られている.水の波の表面波に対する磯部‐柿沼モデルの進行波解の大域構造の研究や流体‐構造連成問題に対する浅水波モデルの適切性の研究も学術論文にまとめるまでには至っていないものの,研究は順調に進んでおり,遅かれ早かれ学術論文にまとめるまでの成果が得られると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,水の波の内部界面波に対する柿沼モデルの研究,水の波の表面波に対する磯部‐柿沼モデルの進行波解の大域構造の研究,流体‐構造連成問題に対する浅水波モデルの適切性の研究を海外の共同研究者と進める. 水の波の内部界面波に対する柿沼モデルの研究に関しては,柿沼モデルが水の波の基礎方程式系の高次浅水波近似になっていることを示したい.これまでの研究により,ハミルトニアンの近似として高次浅水波近似になることは示されている.今後は解の近似になっていること,言い換えれば,解の誤差評価を与えることにより柿沼モデルの正当性を与えることを目指す. 水の波の表面波に対する磯部‐柿沼モデルの進行波解の族の大域構造の研究に関しては,そのモデルに大域的分岐定理が適用可能なことは既に示している.それにより分岐曲線に沿って進行波解を見ていくと,周期が無限大となり孤立波解に収束するか,周期が零に収束するか,解に特異性が現れるか,定常波解に戻るかのいずれかに分類される.実際には起こらないものを排除していき,周期極限波に収束するか,孤立波解に収束するか,孤立極限波に収束するかのいずれかになることを示すことを目指す. 流体‐構造連成問題に対する浅水波モデルの研究に関しては,水面上の浮体が固定されており,その浮体の側面が鉛直になっている場合のモデルを考察し,その初期値問題の適切性を解明することを目指す.この場合,水と大気と浮体の3相が接する接触線を水平面に射影した曲線は時間変化しない.それゆえ,その場合のモデルは最も解析が困難な自由境界問題ではなくなり,非線形浅水波方程式に対する初期値‐境界値問題に帰着される.ただし,その境界条件は特性的かつ非局所的であり,先行研究がない問題となっている. 今年度に引き続き,来年度も電子メールやZoomを用いて進捗状況の報告や研究討論を行い,研究を進めていく予定である.
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Research Products
(3 results)