2022 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of ultracold molecular experiments using high-finesse optical cavity
Project/Area Number |
22H01148
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 淳 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50579753)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 極低温分子 / レーザー冷却 / 光共振器 / Rydberg状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高フィネスの光共振器と極低温分子という新しい組み合わせによって、極低温分子研究を大きく広げていくことを目標としている。具体的には、①強い閉じ込め力を使った新しい極低温分子生成法の開発、②分子のラマン型超放射による高精度分光法の開発、③1μmサイズの巨大分子であるRydberg Macrodimerの効率的な生成実験を目指す。 令和4年度はまず、①の実験に向けて光共振器増幅された3次元光格子中での原子の冷却実験を行った。Ramanサイドバンド冷却と調和ポテンシャル内での圧縮実験に成功し、高速に冷却可能であることを実験的に示すことができた。1軸方向の圧縮により位相空間密度を100倍程度増加させ、温度も130nK程度まで冷却することに成功した。現在2軸、3軸方向の圧縮を行い、より効率的な冷却を目指して研究を進めている。 また、③の実験に向けて、Rydberg状態励起のためのレーザー光源の開発を行った。まず、基底状態(5S1/2)から中間励起状態(6P3/2)への励起のための420nmのレーザーを作成し、さらにそのレーザーの周波数をRbセルを用いたModulation Transfer信号によって安定化した。また、中間励起状態からRydberg状態への励起のための1020nmのレーザーも作成した。このレーザーの周波数は波長計を用いて安定化した。これらのレーザーを組み合わせて、Rbセルを用いたRydberg状態励起による電磁誘起透明化(EIT)信号の観測に成功した。さらに、レーザー冷却された極低温のRb原子に対しても、Rybderg状態への励起を原子数の減少によって確認した。1020nmのレーザー周波数を変えることによって、主量子数が26から100までのRydberg状態への励起に成功している。現在Rydberg状態のイオン化による直接観測のための実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、光共振器増幅された3次元光格子中での原子の冷却実験によって、Ramanサイドバンド冷却と調和ポテンシャル内での圧縮実験に成功し、高速に冷却可能であることを実験的に示すことができた。1軸方向の圧縮により位相空間密度を100倍程度増加させ、温度も130nK程度まで冷却することに成功した。これらは今後の分子生成実験にとっても大きなステップであり、研究の進展は順調だといえる。 また、Rydberg状態励起のためのレーザー光源の開発を行い、基底状態(5S1/2)から中間励起状態(6P3/2)への励起のための420nmのレーザーと、中間励起状態からRydberg状態への励起のための1020nmのレーザーを作成した。さらに、これらのレーザーを用いて、極低温のRb原子に対してRybderg状態への励起に成功した。また、1020nmのレーザー周波数を変えることによって、主量子数が26から100までのRydberg状態への励起に成功している。このように、Rydberg状態励起に向けて十分な性能を持つレーザーの開発に成功しており、研究の進展は順調だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究で、光共振器増幅された3次元光格子中での原子の冷却実験によって、Ramanサイドバンド冷却と調和ポテンシャル内での圧縮実験に成功し、1軸方向の圧縮により位相空間密度を100倍程度増加させ、温度も130nK程度まで冷却することに成功した。令和5年度はさらに2軸、3軸の圧縮によってさらに位相空間密度の上昇を目指して研究を進める方針である。位相空間密度は分子生成効率に直結しており、今後の極低温分子実験へとつながる。 さらに、令和4年度の研究では、Rydberg状態への励起を原子数の減少という形で確認したが、令和5年度の研究ではRydberg状態をイオン化して直接的に観測する研究を行う。直接観測することによって、S/Nの非常に高い観測および微小な信号の高感度な観測も可能となるため、今後のRydberg Macrodimer研究に向けて重要な研究となる。
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