2023 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of hidden ferroelectricity by real-time observation of the electronic states synchronized with the electric field
Project/Area Number |
22H01157
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 伸夫 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (90302017)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 伸太郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40616687)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 外部電場同期のX線吸収分光 / フレキソ電気性 / 強誘電性 / チタン酸ストロンチウム / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
全温度にわたって安定な常誘電体であるチタン酸ストロンチウムが、応力歪みや酸素欠損によって強誘電性が現れることがたびたび報告されてきた。近年、室温でも強誘電性が安定に存在するとの報告が相次いでおり、鉛フリー強誘電体としての期待が高まっている。 本研究では、この強誘電性が「外部電場に自発分極が応答する直接型強誘電性であるか」を明らかにする。特に、分極の担い手であるチタンと酸素の共有結合の電場と温度に対する安定性に注目する。実験は、半導体X線検出器の全シグナルを取り込んで測定する外部電場同期のX線吸収分光法の性能を向上させて行う。この手法はあらゆる強誘電体の電子状態測定に適用可能である。酸化ハフニウムや強誘電体メモリ材料など、未解決な点が多く残る注目の新規強誘電性(隠れた強誘電性)にも測定の対象を広げ、電子状態からそのエネルギー安定性を解明する。 初年度は、導電性基板上に蒸着した厚さ15~25nmのチタン酸ストロンチウム薄膜について外部電場に同期したチタンK吸収端スペクトルの測定を行った。これまで研究成果に基づいて、誘電分極の大きさに比例したスペクトル構造(Ti 3d egピーク)の電場応答を確かめたところ、基板の下向きに卓越的に配向した分極の存在が明らかになった。さらに、この分極は膜厚の減少にしたがって減少することも明らかになった。一方で、膜厚が薄い場合は、下向きに配向した分極が外部電場による反転が抑制されることも明らかになった。 2年目は、初年度の結果を踏まえ、室温(300 K)から低温(100 K)の温度範囲でチタンK吸収端スペクトルの温度依存性の測定を行った。挑戦的な測定方法であったため、十分な温度依存性を得るまでには至らなかったが、技術的な改善点が明らかになったことから、最終年度に温度依存性を成功させ、「強誘電体チタン酸ストロンチウム」の解明を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象物質についてスペクトルデータ測定はできている。チタン酸ストロンチウム薄膜で見出された誘電性が、通常の強誘電性と考えるよりはフレキソ電気性(液晶のように曲げると現れる電気的な歪み)であることを確定的にするための実験に加え、測定対象を他のチタン酸化物についても広げるなど、ほぼ計画通りに研究が進行している。 また、放射光X線を用いた実験を定常的に行うための実験課題も採択されており、当面の研究計画に問題はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に測定したスペクトルで、チタン酸ストロンチウム薄膜には自発分極が生じていること、膜厚の依存して分極の大きさや電場応答が変化することなどが明らかになった。 今後は、分極を作り出すもう一方の主役、つまり酸素イオンの電場応答についても研究を展開する。さらに、室温から100Kの温度範囲での測定を行い、チタン酸ストロンチウム薄膜が強誘電体としての性質を示すかを解明する。
|