2022 Fiscal Year Annual Research Report
テンソルネットワーク法の展開によるフラストレート磁性体の新奇物性探究
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22H01179
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大久保 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (00514051)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テンソルネットワーク / フラストレート磁性体 / スピン液体 / 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、テンソルネットワーク法に基づくフラストレート磁性体の解析手法として、特に、有限温度状態、励起状態の計算手法の確立を目指し、(i)有限温度計算の高精度化と(ii)励起状態計算法の開発を行った。
(i)有限温度計算の高精度化においては、有限温度状態を記述する密度演算子をテンソルネットワークで表現するアプローチを検討した。密度演算子のテンソルネットワーク表現では、密度演算子を純粋状態とみなすpurificationに基づいたテンソルネットワーク表現と、密度行列を演算子として取り扱うテンソルネットワーク表現の双方を比較し、現状の最適化手法では、後者の方が低温状態をよく表現できることを確認した。また、後者の表現において、無限に大きな系での最適化を検討し、直接結合した最近接の二つのテンソルだけを考慮した最適化ではなく、複数テンソルのクラスターを用いた最適化により低温領域の計算精度が上がることも再確認できた。加えて、対象とするフラストレート磁性体に合わせて、密度行列を近似するテンソルネットワークの構造を変えることでも、虚時間発展の近似精度が向上することも明らかとなった。
(ii)励起状態計算法の開発では、基底状態に不純物テンソルを挿入する励起状態計算方法の指針を検討したが、与えられたテンソルネットワーク表現を最適化する手法について、複数の可能性を比較している段階に留まっており、さらなる検討と実問題での検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有限温度計算の手法開発についてはおおむね順調に進展しているが、励起状態の計算方法については、良い最適化手法を構築できておらず、今後のさらなる研究が必要なため。
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Strategy for Future Research Activity |
有限温度・基底状態計算については、開発した手法を用いて具体的なフラストレート磁性体への応用を進める。励起状態計算方法については、引き続き、手法開発を進める。
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