2022 Fiscal Year Annual Research Report
三角形・ハニカム・カゴメネットワークにおける新奇超伝導状態の探索
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22H01182
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
工藤 一貴 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (40361175)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超伝導 / ハニカムネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、三角形ネットワークを持つ超伝導体、ハニカムネットワークを持つ超伝導体、カゴメネットワークを持つ超伝導体の試料を合成して物性測定を行い、新奇超伝導状態を探索した。その結果、ハニカムネットワークを持つ超伝導体BaPtAsとBaPtSbの固溶体において、電子格子相互作用に基づく従来型の超伝導発現機構では単純には説明できない結果を得ることができた。 BaPtAs (空間群P-6m2)とBaPtSb (空間群P-6m2)は、PtとAsあるいはPtとSbからなるハニカムネットワークを持つ。私たちは、これまで、BaPtAsにおいて2.8 K、BaPtSbにおいて1.64 Kの超伝導を報告していた。本研究では、それらの固溶体であるBaPt(As1-xSbx) (空間群P-6m2)の多結晶試料を合成し、粉末X線回折実験で結晶構造、エネルギー分散型X線分光実験で化学組成を評価した。良質と認められた試料について、磁化測定と比熱測定を行なった結果、xを変化させるとBaPt(As1-xSbx)の超伝導転移温度が非単調に変化することが分かった。超伝導転移温度のx依存性がピークを示す。一方で、格子定数は、xの増加とともに単調に増加した。さらに、電子比熱係数とデバイ温度は、xにほとんど依存しなかった。これらのことは、この系の超伝導が、電子格子相互作用に基づく従来型の超伝導発現機構では単純には説明できないことを示唆している。現在、ミュオンスピン緩和実験の結果について、解析が進んでいる。今後、この系について物性測定を進めて、超伝導状態の詳細を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) BaPtAsとBaPtSbの固溶体の良質な試料が合成できており、それらにおいて新奇超伝導を示唆する結果を得つつある。(2) ミュオンスピン緩和実験の結果について、解析が進んでいる。(3) 他の研究対象物質についても良質な試料を合成できており、磁化や電気抵抗率などの基礎的な物性測定が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
BaPtAsとBaPtSbの固溶体において、超伝導状態を詳細に調べるための物性測定を行う。他の研究対象物質についても、当初の予定通り、新奇超伝導状態の探索を進める。物質の幅を広げて普遍的な知見を得るために、新奇超伝導体の新たな候補物質を探索する。
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Research Products
(18 results)