2022 Fiscal Year Annual Research Report
Phase transition of polymer blends in cell size space
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22H01188
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳澤 実穂 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50555802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 玄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (40906749)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミクロ空間 / 濡れ / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、細胞内に含まれる生体高分子溶液がしめす高次構造形成機構として、相分離やゲル化などの相転移が注目されている。高分子溶液が示す相転移の基本原理は、高分子科学やソフトマター物理学において研究されてきたものの、細胞のもつ非平衡性や超多成分性などの特徴により、細胞内相転移には未解明な点が多い。申請者らは、既知の高分子材料のみから形成される人工細胞を用いて、細胞サイズ空間に閉じ込められた高分子混合溶液の相転移を解析してきた。その結果、ミリリットル量以上のバルク系とは異なる熱平衡状態が、細胞サイズに該当するミクロ系では見られることを発見した。このサイズ依存的な相転移現象を説明するため、2022年度にはミクロ空間表面を覆う膜物性と空間サイズを変数とする実験と粗視化シミュレーションを行い、鎖長依存的な高分子の膜濡れが鍵となることを明らかにした。本研究成果は、従来無視されてきた僅かな高分子の鎖長(分子量)分散が、細胞サイズ空間での相転移においては無視できないことを意味している。2023年度は、こうした多分散性を考慮した粗視化シミュレーションと実験をさらに進めることで、ミクロ系の相転移を多分散性の視点から記述する。さらに、非熱的揺動による細胞サイズ空間の操作法を確立し、空間特性が内部の熱平衡状態へ及ぼす影響を解析する。本研究により、細胞内相転移を理解するための基盤構築が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった、人工細胞の空間特性(体積, 膜物性)を変化させる手法の確立と、人工細胞中に閉じ込められた高分子混合溶液に対する熱平衡状態の解析が可能となったことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子鎖長の多分散性を考慮した粗視化シミュレーションと実験を進めることで、ミクロ系の相転移を、多分散性を考慮した形で記述する。また、細胞サイズ空間に閉じ込められた高分子溶液の熱平衡状態が、非熱的な摂動により変化する様子を解析する。非熱的な摂動の例として、人工細胞の強制変形や、光などを用いた膜物性の変化による空間特性(体積,形,界面物性)の変化などを用いる予定である。また、熱平衡状態の変化を解析する対象としては、高分子の並進拡散や相分離状態とする。これらを、ミリリットル量以上のバルク系と比較することで、細胞サイズの空間特性が高分子溶液の熱平衡状態へ及ぼす影響を明らかにする。
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Research Products
(31 results)