2022 Fiscal Year Annual Research Report
窒素-水素複合ガス入射による非接触プラズマ形成過程の解明
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22H01198
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
江角 直道 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20321432)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | プラズマ-ガス相互作用 / ダイバータ / 非接触プラズマ / 原子分子過程 / 水素 / 窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマとガスとの相互作用によりダイバータ領域に形成される非接触プラズマの挙動の理解とその制御方法の確立は、磁場閉じ込め核融合炉の実現に不可欠なダイバータ板への熱粒子負荷低減、炉心プラズマとの整合性の観点において解決すべき重要な課題である。窒素・水素の複合ガス入射に伴う、窒素分子と水素分子が介在するプラズマ再結合過程は水素分子のみが介在する再結合過程よりも高い反応レートを有することから非接触プラズマ制御への期待が高い。そこで本研究では水素ガスおよび窒素ガスとプラズマの相互作用に焦点をあて、物理化学的な原子分子反応過程を詳細に調べ、それらが非接触プラズマ形成とその時空間構造に与える影響を明らかにすることを目的としている。 2022年度は、水素-窒素ガス重畳入射による非接触プラズマの時空間構造非接触プラズマを形成するため、V字ターゲットを有するGAMMA10/PDXダイバータ模擬モジュールにおいて、4波長の空間分布を同時に計測可能な光学系(4分岐光学系アルバプリズム)を組み込んだ高速度カメラを導入し、高い時空間分解能での観測を実現した。分子活性化再結合過程で特徴的な振る舞いを示す水素バルマー線のHα(656nm)とHβ(486nm)、窒素分子第1正帯, 窒素原子の波長に注目し、各波長の発光強度分布の比を取るなど詳細な解析を行なった。水素ガスのみを入射した場合は、水素分子の介在するによる分子活性化再結合(H-MAR)がV字ターゲットに挟まれた領域を起点として時間とともにその範囲が広がることを示唆する結果を得た。また、窒素ガスと水素ガスの重畳入射時にはH-MAR が抑制されるものの、電子密度は水素ガスのみを入射した場合と比べてV字ターゲット中央部でも大きく低下することがマイクロ波干渉計による観測から明らかになり、窒素分子の介在した再結合過程が重要な役割をしていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素、窒素重畳入射による非接触プラズマ生成過程の時空間的挙動を詳細に理解することを目的として、水素、窒素ガスを入射した際の Hα, Hβ線ならびに NI、N2 1st Positiveの4波長の発光強度の時空間分布を観測可能な4分岐光学系(アルバプリズム)を取り付けた高速度カメラを整備し、GAMMA 10/PDXダイバータ模擬実験モジュールでの実験を行なった。本システムの採用により、同一プラズマの異なる 4 波長の発光の時空間分布を同一視野で同時計測することが可能となった。これにより水素ガスのみ入射した場合の分子活性化再結合の発生を示唆する領域の時間発展が明らかになり、窒素ガスとの重畳入射時には、窒素分子が介在する再結合過程の重要性を示した。これらの結果は、国内学会、国際会議等で発表し、2023年10月に開催されるIAEA-FEC会議での発表にも採択された。現在、水素分子の振動温度、回転温度の空間分布やガス入射位置・入射タイミング、ターゲット板角度およびプラズマ照射位置(ストライクポイント)等の影響を調べた実験結果の解析を進めるとともに、より詳細な原子分子反応過程の理解のため、衝突輻射モデルの準備と並行して、発光スペクトル解析ソフトウェア、CAEソフトウェアを活用した解析の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に導入した4波長の空間分布を同時に計測可能な光学系(4分岐光学系)を組み込んだ高速度カメラを用いて、水素-窒素ガス重畳入射による非接触プラズマの時空間構造変化を高時空間分解能で観測するとともに、プラズマ-ガス反応過程のモデル化において非常に重要となる反応生成物の生成量、存在比を分光計測や既存の質量分析器等を活用して行う。これら反応においては、これまで分子の振動・回転状態によって、分子の介在する再結合過程の反応速度が大きく変化することが衝突輻射モデルによる計算から明らかになっていることから、GAMMA10/PDXダイバータ模擬モジュール内に設置された多点同時分光計測システムを用いて分子からの発光スペクトルの空間分布を詳細に観測し、分子性ガスの振動・回転状態が種々の反応過程に及ぼす影響を調べる。 ダイバータ模擬モジュール内のV字ターゲットの開口角度を調整しながら水素リサイクリングによる局所的な水素ガス圧力を変化させ、追加入射水素ガス量を減らした状態での窒素ガス入射とリサイクリング水素との反応過程を詳細に調査し、ターゲット板角度やガス導入位置の違いによる、分子性ガスの振動・回転状態への影響やターゲット近傍のリサイクリング水素に対する窒素ガス入射による重畳効果の検証を行う。並行して、ターゲット構造やガス入射位置の影響等の三次元的な効果を考慮したプラズマ-中性ガスに関するシミュレーションにも取り組む。 また、トカマク装置のダイバータや他のダイバータプラズマ模擬実験装置とGAMMA10/PDXの結果を相補的に比較しながら窒素-水素混合状態における非接触プラズマ形成過程の理解を進めるとともに、二次元流体コード、電磁界シミュレーション、中性粒子挙動シミュレーションの準備も進める。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Measurement of Radiated Power using an InfraRed Imaging Video Bolometer system in the Upstream of GAMMA 10/PDX Divertor Simulation Plasma2023
Author(s)
Naoki SHIGEMATSU, Naomichi EZUMI, Kiyofumi Mukai, Takumi SETO, Takuma OKAMOTO, Kosuke TAKANASHI, Satoshi TAKAHASHI, Reina MIYAUCHI, Satoshi TOGO, Mafumi HIRATA, Junko KOHAGURA, Masayuki YOSHIKAWA, Ryutaro MINAMI, Yousuke NAKASHIMA and Mizuki SAKAMOTO
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Journal Title
Plasma and Fusion Research
Volume: 18
Pages: 2402031
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] TIME EVOLUTION OF 2D EMISSION PROFILES OF DETACHED PLASMA DURING HYDROGEN AND IMPURITIES COMBINED GAS SEEDING IN GAMMA10/PDX2023
Author(s)
N. EZUMI, H. GAMO, S. TAKAHASHI, T. OKAMOTO, K. TAKANASHI, N. SHIGEMATSU, T. SETO, R. MIYAUCHI, S. TOGO, J. KOHAGURA, M. YOSHIKAWA, M. SAKAMOTO, R. PERILLO
Organizer
29th IAEA Fusion Energy Conference
Int'l Joint Research
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[Presentation] Spatiotemporal observation of N-MAR in GAMMA 10/PDX2022
Author(s)
N. Ezumi, H. Gamo, S. Takahashi, T. Sugiyama, T. Okamoto, N. Shigematsu, K. Takanashi, A. Kondo, T. Seto, S. Togo, M. Hirata, D. Hwangbo, J. Kohagura, M. Yoshikawa, Y. Nakashima, M. Sakamoto, R. Perillo, N. Ohno, K. Sawada, S. Masuzaki
Organizer
25th International Conference on Plasma Surface Interaction in Fusion Devices (PSI-25)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Comparison of Spatio-temporal Distribution of Emissions Related to N MAR Based on High Speed Camera Observation in GAMMA 10/PDX Divertor Simulated Plasmas2022
Author(s)
S. Takahashi, N. Ezumi, T. Tamura, T. Okamoto, N. Shigematsu, T. Seto, K. Takanashi, R. Miyauchi, S. Togo, M. Hirata, J. Kohagura, M. Yoshikawa, Y. Nakashima, M. Sakamoto
Organizer
The 31st International Toki Conference on Plasma and Fusion Research
Int'l Joint Research
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[Presentation] Development of infrared imaging video bolometer system for radiation power measurement in the upstream of GAMMA 10/PDX divertor simulation plasma2022
Author(s)
N. Shigematsu, N. Ezumi, K. Mukai, T. Seto, T. Okamoto, K. Takanashi, S. Takahashi, R. Miyauchi, S. Togo, M. Hirata, J. Kohagura, M. Yoshikawa, R. Minami, Y. Nakashima, M. Sakamoto
Organizer
The 31st International Toki Conference on Plasma and Fusion Research
Int'l Joint Research
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