2022 Fiscal Year Annual Research Report
土壌から植物へのトリチウム移行による有機結合型トリチウム生成量評価とそのモデル化
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22H01207
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90380708)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | トリチウム / 植物 / 土壌 / OBT / 環境保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに土壌中でのトリチウム移行に関する研究を進めてきており、本研究はこれまでの研究を発展させ、土壌から植物へのトリチウム移行モデルの構築を目指し、特に有機結合型トリチウムに注目した研究を実施している。2022年度は、下記の内容で実施した。 (1)土壌中トリチウム移行に関する研究:土壌から植物への移行を把握するためには、土壌中でのトリチウム移行を理解する必要がある。これまで天然土壌におけるトリチウム移行に関するデータを集積してきたが、植物育成に利用される泥炭度およびバーミュキュライトにおけるトリチウム挙動に関する実験を実施した。具体的には、土壌試料を一定期間トリチウム水に浸漬し、その後、常温乾燥、昇温乾燥を行ってトリチウム放出挙動を観測した。同様にトリチウム非接触試料からの水蒸気放出実験を行い、トリチウム放出と水分脱離の関係性を明らかにした。 (2)重水素実験設備の構築:放射性物質であるトリチウム雰囲気下での植物育成実験を安全に実施するため、まずコールド実験室での重水を用いた実験設備を構築した。植物へ移行した重水素量の定量手法を検討し、触媒同位体交換法用いた方法を提案し、予備試験を実施した。 (3)土壌から植物への重水移行に関する研究:重水を滴下した土壌において、一定期間マイクロトマトを育成した後、茎や葉を採取し、真空乾燥法、水蒸気同位体交換法、燃焼法によって、植物中の重水素を水バブラーに捕集した。(2)で構築した手法を適用し、重水素移行量の定量を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は土壌から植物への重水移行実験を実施し、重水素分析手法の確立を含め、一定の成果を挙げることができた。また、試料土壌に対して、実際にトリチウム水を用いた実験を安全に実施し、土壌試料におけるトリチウム保持特性を把握することができた。現時点では特に大きな問題は存在せず、当初の目的に沿って進められていることからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
重水を用いた実験を継続しながら、トリチウム水を用いた実験を実施していく予定である。以前の研究で構築した気密性植物育成装置を参考にして、九州大学アイソトープ総合センター伊都地区実験室内に、新たな実験設備を構築する。植物育成に関わる土壌種を中心に、土壌中透水速度や、同位体交換容量を定量し、土壌におけるトリチウム移行モデルの高度化を図る。また、トリチウム汚染土壌で育成された植物中のトリチウム捕捉形態を調べ、特に植物中での滞留時間が長い、有機結合型トリチウムと土壌汚染レベルとの関係を把握する。
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