2022 Fiscal Year Annual Research Report
Nonperturbative Study of Quantum Field Theories in view of Generalized Symmetry
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22H01218
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷崎 佑弥 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (90782102)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 一般化された対称性 / 非摂動的場の理論 / カラー閉じ込め |
Outline of Annual Research Achievements |
場の量子論がもつ一般化された対称性に着目し,その強結合領域におけるダイナミクスについて研究を行った.場の量子論は量子多体系の低エネルギー領域での普遍的な振る舞いを記述する強力なフレームワークであるが,それを具体的に解くことは必ずしも簡単ではなく強結合領域の物理についての深い理解を必要とする.対称性はそのような具体的に解けない設定でも場の理論が持つ非摂動的性質を抽出するための重要な道具である.近年その対称性の概念がより幅広く捉えられるようになり,そのような一般化された対称性によって場の理論の新しい側面を明らかにできる可能性が広がっている.本研究では,このアイディアを推し進めることでいくつかの新しい研究のアイディアを創り出すことができた. 具体的には次のような成果を上げた:(1)4次元ゲージ理論にある中心対称性についての背景ゲージ場を導入することで,カラー閉じ込めの性質を保ちながら弱結合領域に理論を変形する手段を開発し,量子色力学(QCD)型の理論のカイラル対称性の破れなどについて新しい知見を得た.(2)トポロジカルソリトンは対称性の自発的破れに伴って現れる非摂動的な励起状態であるが,その安定性は50年以上にわたりホモトピー郡によって分類できると考えられていた.本研究で,必ずしもホモトピーが安定性を捉えられないこと,そして新しい非可逆的対称性によってその安定性をより詳細に理解できることを示した.(3)4次元ゲージ理論について中心対称性のゲージ化に伴うアノマリーの存在が連続理論から示唆されていたが,これまで紫外発散を正則化したうえでこれらの新しい非摂動的アノマリーが本当に存在するのかは知られていなかったが,格子ゲージ理論と一般化された対称性を組み合わせることで完全に正則化された形でこれらのアノマリーの存在を証明することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究概要に書いた通り,一般化された対称性に着目することで成果を上げることができた.特にQCD型の理論に対して背景ゲージ場を入れることで弱結合領域でありながら閉じ込めやカイラル対称性の定性的性質が調べられるという発見は全く新しい成果であり,今後の発展性も見込める内容である.また,トポロジカルソリトンの安定性が非可逆的対称性で記述されるという発見も本研究では4次元CP1シグマ模型という特定のモデルにもとづいた知見であるが,一般に場の理論の住む時空の次元が高ければ広く見られる性質であると期待できる.これら以外にも十分多くの研究成果を出せたので,この自己評価が妥当であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
背景ゲージ場を導入して場の理論の強結合的性質を弱結合領域に相転移なしに移す手法は,まだ生まれたばかりの研究方法なのでより多くの例でその妥当性を検証していく必要がある.これを発展,応用することで量子色力学の新しい性質を明らかにしていきたいと考えている. また,非可逆的対称性についても近年多くの場の理論が備えている性質であることがわかってきており,それらの発展を取り入れながら場の理論の非摂動的性質の研究に応用して行きたいと考えている.
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