2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Thermodynamical Study on Generation Mechanisms of Sea Surface Temperature Anomalies associated with the ENSO and their future changes
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22H01293
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東塚 知己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40376538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
升本 順夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60222436)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大気海洋相互作用 / 気候変動 / 気候変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
エルニーニョ/南方振動は,日本を含む世界各地に異常気象を引き起こすだけでなく,海水温や湧昇に伴う栄養塩の供給の変動を通して広い海域の生態系にも大きな影響を与えることが知られているため,その理解と予測は,気候変動研究の中でも特に重要な課題である。今年度の研究では,エルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差の熱力学的なメカニズムを,特に,これまであまり注目されてこなかった鉛直乱流混合過程に焦点を当てて,明らかにした。具体的には,精緻な鉛直乱流混合のパラメタリゼーションが導入されていて,鉛直乱流混合過程も含めて,太平洋熱帯域の変動を現実的に再現できる領域海洋モデルを構築した上でシミュレーションを行い,混合層厚の時空間変動を考慮した完全に閉じる熱収支解析を行った。その結果,先行研究で重要性が指摘されていた鉛直移流よりも,鉛直混合過程の方が,エルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差の形成に関して支配的に寄与していることが初めて定量的に示された。一方,海面熱フラックス偏差がエルニーニョ現象の発達に対する負のフィードバックとして働くことも明らかになった。さらに,鉛直混合項の正偏差のメカニズムを詳しく調べた。その結果,正の温度躍層深偏差に伴い,混合層の底での鉛直水温勾配が弱まるため,鉛直混合による冷却効率が低下することが明らかになった。また,正の混合層厚偏差に伴い,鉛直混合による冷却に対する感度が低下することも,正の海面水温偏差の形成に大きく寄与していることが明らかになった。一方,貿易風の弱化に伴い,鉛直流速シアが弱化するが,混合層の底における鉛直密度成層も弱化しているため,鉛直拡散係数には有意な偏差が見られないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した通り、太平洋熱帯域を対象とした領域海洋モデルによる現実的な過去再現実験を行い、混合層熱収支解析を中心に、エルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差の熱力学的なメカニズムの詳細を鉛直混合過程に焦点を当てながら明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
エルニーニョ現象には、東太平洋赤道域に正の海面水温偏差が生じる古典的なエルニーニョ現象と中部太平洋赤道域に正の海面水温偏差が生じるエルニーニョもどき現象が存在する。この両者は、全球の気候への影響が大きく異なることが知られているため、両者の違いを理解することも重要な課題である。本年度の研究で、古典的なエルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差のメカニズムを明らかにすることに成功したので、次年度以降に、エルニーニョもどき現象に伴う正の海面水温偏差のメカニズムを明らかにするとともに、なぜ2種類のエルニーニョ現象が存在するのかを明らかにしていきたいと考えている。
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