2022 Fiscal Year Annual Research Report
Impacts and resolution dependencies of air-sea heat budget fluctuation associated with the northwestern Pacific monsoon
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22H01297
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 知己 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80584979)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | モンスーントラフ / 大気海洋相互作用 / 台風 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、全球非静力学大気モデル NICAMおよびその海洋結合版であるNICOCOを用いて、2020年の夏季北西太平洋モンスーントラフの再現実験を実施した。また、北西太平洋モンスーントラフ領域において下層の気圧場からトラフを特定して強度と軸位置の時系列データを作成し、その変動の大きさや傾向の比較を行った。さらに、同領域における大気・海洋の熱収支の各項の変化の時系列を確認した。 実験を行うにあたり、従来主流であった海洋初期値の作成方法(観測から得られた大気データを境界条件として数十年海洋モデルをスピンアップする)では、確率的に変動する海洋の内部変動の影響で、実験開始時に現実との乖離が大きくなってしまうという問題があるため、次のような手法を適用した: 海洋の観測を元に作成された再解析データより、温位と塩分のデータを海洋モデルに内挿して与え、流速をゼロとして10日間スピンアップする。この方法により、今回の数ヵ月程度の実験に影響する数100m程度の深度までは地衡流調節によりかなり現実に近い初期値を得られることが確かめられた。 この海洋初期値を用いてNICOCO実験を行い、NICAMによる同様の実験を行って比較することにより、大気海洋相互作用の有無でどのような違いが現れるかを調べた。 しかし、NICOCO実験において生じる海面水温のドリフトが当初想定より大きく、結果の信頼性を損なうと判断したため、Flux調節法を導入する変更を行い、これを抑制することに成功した。 得られた実験データの解析により、NICOCOの方がNICAMよりもモンスーントラフの北進が促進されていると示唆される結果が得られた。このようになる理由は、大気海洋結合モデルにおいては東西に伸びるモンスーントラフの南北で、トラフに伴う下層風の海面水温への影響が逆符号となるためとみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全球非静力学大気モデル NICAMおよびその海洋結合版であるNICOCOでの比較実験の結果に、大気海洋相互作用の役割を示すかも知れない明白な違いが現れたため、今後の結果が楽しみな進行状況である。 途中でNICOCOの海面水温ドリフトに対応するためにFlux調節を導入する必要性に迫られるなど、一部計画に変更が生じたが、すでに問題は解決している。 こうしたことから、全体の進捗状況としては (2)の「おおむね順調に進展している」が妥当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はFlux調整を適用した上でアンサンブル計算を行うことになるため、作業がやや煩雑になる。 bashスクリプトを用いて、互いに類似しているアンサンブル計算やその準備・後処理に必要な作業の大部分を自動化することで、作業ミスを抑制するとともに、時間的な効率も向上させ、科学的な考察の部分にこれまでよりも一層時間を注ぎ込めるような状態を作り出す。
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