2022 Fiscal Year Annual Research Report
火山近傍の活断層の発達と長期相互作用の解明―布田川断層と阿蘇火山における研究―
Project/Area Number |
22H01305
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠田 晋次 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (80313047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石村 大輔 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (00736225)
鳥井 真之 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 特任准教授 (40711908)
奥野 充 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50309887)
川口 允孝 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 特別研究員 (20943608)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熊本地震 / 布田川断層 / 活断層 / 阿蘇カルデラ / 地表地震断層 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)熊本地震後の復旧工事露頭データの総括:2016年熊本地震直後から現在までの間に調査を行った工事露頭についてデータ整理を行った.その結果,約3万年前の草千里ヶ浜降下軽石層以降の火山噴出物に共通する断層変形,表層のノンテクトニックな多数の断層変位など,火山噴出物に共通する地震イベント変形を見出した.また,これらの発生年代が特定の時期に集中していることも突き止めた. 2)航空レーザ計測データなどによる断層変位地形の再検討:高精度航空レーザ計測データによって,熊本地震時の阿蘇カルデラ西部の詳細変位地形を抽出した.特に,後述する九州東海大学キャンパス周辺のテクトニックと重力性の変形が混在する複雑な変形構造を明らかにした. 3)熊本地震の地震断層のトレンチ調査:本年度は熊本地震震災ミュージアム建設にともなって,施設につながる取り付け道路に大規模な掘削法面が現れ,多数の断層,溶岩,降下テフラなどが露出した.そのため,今年度はトレンチ掘削を行わず,熊本県の許可を得て,この幅約100mx高さ約15mの断層露頭について,詳細な観察・記載・年代測定サンプリングを実施した.その結果,露頭下部に露出した2.7万年前の沢津野溶岩堆積以降,少なくとも7回の断層活動を見出した.またこれらの活動によって沢津野溶岩が幅数m規模で不規則に破砕されていることも新たにわかった. 4)地震断層未表出区間の火山噴出物の層厚・性状確認のためのボーリング調査:今年度は南阿蘇村黒川地区で20m深さのボーリング調査を実施し,約3万年前の草千里ヶ浜降下軽石を深度5mに,深度11m以深に高野尾羽根溶岩を確認した.浅部のアカホヤ火山灰(7300年前)以降の堆積物については現在分析中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既往の復旧工事の露頭データについては当所の想定よりも膨大な量になっている.学術論文や学会発表においても工事関係者の許可が必要な部分もあり,その部分に手間取りやや遅れ気味である.しかしながら,火山噴出物に共通する断層変形,表層のノンテクトニックな多数の断層変位など,火山地域特有の変形スタイルをコンパイル可能な貴重な断層活動情報であることをあらためて確認した.さらに,上記の南阿蘇村での震災ミュージアム建設に伴う有用な断層露頭が期間中に露出したことから,新期のトレンチ掘削を行うことなく,新期の溶岩とその上位の噴出物を切る断層変位,多数回の地震イベントを検出することができた.ただし,熊本地震震災ミュージアム建設や周辺整備に伴って地元ボーリング業者の確保に手間取り,用地交渉にも想定以上に時間を要することになりボーリングに関しては翌年度に繰り越しとなった.繰り越し調査の結果,南阿蘇村黒川地区で20m深さのボーリングを掘削し,約3万年前の草千里ヶ浜降下軽石を深度5m,深度11m以深に高野尾羽根溶岩を確認した.浅部のアカホヤ火山灰(7300年前)以降の堆積物については現在分析中である.
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Strategy for Future Research Activity |
熊本地震直後から現在までの工事露頭について,想定よりもデータ量が膨大ではあったが,地表変形様式や発生年代に係わる手掛かりをいくつか得ることができた.これらをもとに,来年度以降,各地でのイベント発生年代の共通時期を明確にする.状況によっては熊本大鳥井准教授の保存する試料などを用いて,年代測定を追加で行う予定である.また,熊本地震から6年が経過し,布田川断層の活動性に関して,他の研究機関等による調査結果も続々と公表されており,活動年代に関しての整合性をチェックする.また,地震断層未表出区間の杵島岳・往生岳・米塚噴出物(過去4000年間の噴出物)の層厚・性状確認のためのボーリング調査については,今年度実施した震災ミュージアム近傍の露頭調査の年代測定やとりまとめを保管する形で,サイトを選定し実施する.これらのデータを総括して,上記布田川断層の活動履歴との関係性を明らかにし,両者の時空間の関連性を解明する予定である.
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