2022 Fiscal Year Annual Research Report
岩相の特徴量自動認識による火山性露頭その場調査手法の研究
Project/Area Number |
22H01326
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
春山 純一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40373443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 大悟 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 招聘研究員 (10831109)
藤本 圭一郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (20446602)
野口 里奈 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30792965)
下司 信夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (70356955)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 露頭 / 火山 / 地質調査 / 画像認識 / 特徴量抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
地層が明瞭に露出している露頭を有する、伊豆大島、三宅島、大瀬崎において、当初の計画通り、数日にわたる野外調査を行い、現地での露頭観察と様々な条件(測光条件、解像度等、日照条件、光学機器)で収集した画像データの収集を行うとともに、平行して露頭構成物質の様々な産状についての情報確認を行い、岩相判断のための着目点や除去すべき情報について整理を行った。また、岩相解析時の情報整理・識別方法、露頭画像と露頭構成物質との対応調査を本研究グループ内で進めた。更に画像解析によるテクスチャ特徴量分類、特徴的な地質構造検出に関する基本的なアルゴリズムを調査研究したのち、野外調査において取得した様々な露頭画像に対して適用、実際に同アルゴリズムによる野外調査手法の効率がどのように高まる可能性があるかを確認する作業を進めるに至っている。加えて、野外調査においては、どのような基準を元に地層を判断しているか、地質学的観点のみならず情報科学的観点もふまえての議論を通じて、たとえばフローチャートを作成するなどしつつ、明確化・言語化していく作業を行っている。こうした作業は、露頭調査の現場でも行い、テクスチャ特徴量分類、特徴的な地質構造検出アルゴリズムを野外調査その場でどのように適用していくかの検討を進めた。 一連の作業成果は、今後国内学会(日本地球惑星科学連合大会等)にて発表することになっており、準備を進めている。なお、今後、ドローンを使って露頭データを得ることができるように、本研究グループメンバーがドローン操作の講習会を受けてスキルを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、地質学者による岩相の特徴量抽出プロセスを聞き取り等により体系的に整理していく第一段階として、地質学者が露頭表面の見かけ上のどのような特徴を手掛かりとし、どのような判断順序を経てその岩相や構造を判断しているかを明らかにするために、露頭画像上の色調やテクスチャといった特徴量の抽出から岩相判断に至る「フローチャート」の作成を行った。伊豆大島で取得した火砕物が整合的に堆積する露頭の画像をもとに、露頭を構成するスコリア・火山灰・溶岩などを画像上で識別するための特徴の抽出と、それらを区別するために必要な判断基準について整理し、フローチャートを試作した。 また、野外調査にて得られた画像データについて、岩石や地層写真を要素画像に細分割するセグメンテーション、セグメントごとの色やテクスチャ情報(GLCM等)の算出、それを元にした要素画像のクラスタリング等の岩相の特徴認識をおこなうために必要な基本アルゴリズムを開発し、特に三宅島等で撮影した溶岩、露頭の写真に対して、基本的な岩相認識処理が行えることを実証した。また、初期適用として層構造に複雑な湾曲や不整合が見られない比較的単純な地層の事例として伊豆大島火山の地層大切断面露頭に露出する降下火砕物露頭を用い、層間境界線の画像認識ができることを示した。 本年度は、代表的露頭を有する三地域(伊豆大島、大瀬崎、三宅島)で野外調査を実施する中、専門家がどのような基準を元に地層を判断しているか、手持ちカメラおよび無人航空機を用いての露頭画像データ収集にあたっての測光条件や解像度、画像解析アルゴリズム開発に資する露頭画像の質や量など、地質学研究者、情報科学研究者の間での議論を通じて明確化・言語化していく作業を現地でおこないながら進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、地質学者による岩相の特徴量抽出プロセスを聞き取り等により体系的に整理していくうえで、火山岩地域に出現し得る様々な岩相に対応した岩相認識のための露頭観察のフローチャートを拡充するとともに、実際の地質学者の野外調査における岩相識別作業との比較検討を行い、岩相認識において着目すべき特徴量や識別の思考順序等を整理する。 また平行して、昨年度改良を重ねてきた特徴量抽出処理の基本アルゴリズムが様々な溶岩や地層に対してロバストに適用できることを把握し、課題が生じたら解決することで、岩相の特徴認識アルゴリズムの適用範囲を拡大する。たとえば、湾曲や不整合が見られない比較的単純な地層に対して、画像認識アルゴリズムで定量的な根拠に基づいて引いた層間境界線を元に層の厚み分布を算出する等の、定量的根拠に基づいた統計量を大量の画像に対して算出できることなどの価値を見出しつつ、従来法ではできなかった野外調査手法の提案に繋げる。 上記したように、本年度は、画像解析アルゴリズムを単純から複雑なケースへ段階的に試行を重ねていく段階である。まずは、前年度取得した露頭画像を解析難易度別に分類し整理を行う。具体的には、単純な成層構造のみのものや、不整合構造や断層、ダイクのある露頭画像をそれぞれ選別・整備する。こうした結果をふまえ、画像解析アルゴリズム開発の進行度合いや検証内容によっては必要となる前年度取得していないような種類(岩相、撮影条件)の画像を、新たに野外調査にて取得することを計画・実施する。その際に、可搬型計算機に画像解析アルゴリズムを搭載し、現地でのその場適用の可能性を検討する。 こうした成果を、学会等を通して広く公表するとともに、本研究に資する露頭情報の収集を継続して行う。
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