2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規開発の高温側古水温プロキシ・超長鎖アルケノンが拓く温室地球解読の新展開
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22H01344
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長谷川 卓 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (50272943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 英人 北海道大学, 理学研究院, 助教 (00785123)
佐川 拓也 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (40448395)
石村 豊穂 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (80422012)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アルケノン / 異性体 / 古水温 / 古海洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
地質試料から抽出したアルケノンに関して,異性体の存在が問題になることが解ってきた.炭素数40のアルケノンの分子構造中の2つの不飽和トランス結合部位のうち1つがcisになる異性体の存在は,通常のアルケノン定量で用いるGC分析では認識できない.一方,GC/MSの選択イオンモニタリングモードで分析すればその存在は理解できるが,定量性が低い.ただ層序学的に追跡すればその量的な変動は追跡することができる.初生的なall-trans体のアルケノンがどれだけの割合で異性体になったかを示す異性体化率を産出してその変動曲線を求めた.異性体化が堆積後の初期続成で生じているという考え方は,炭素数37のアルケノンでは支配的な考え方であり,それが正しければ水温指標となるアルケノン不飽和度指数(UK'40)とは連動性を示さないはずである.ところが求めた異性体化率をHasegawa & Goto (2024,Organic Geochemistry)で公表したアルケノン不飽和度指数(UK'40)変動と比較したところ,顕著な連動性が確認できた.アルケノン不飽和度はハプト藻が生育した水温の変動に連動しているので,異性体化率も何らかの環境変動に関連して変動していることが明らかになった.つまり異性体の定量を確実に行わないと,アルケノン不飽和度を用いた水温換算には大きな誤差を含むことになる. これは,大きな問題提起となった.まずGC/MSなどを用いて異性体を定量する手法を確立しなければならないのである.このことに関しては,Hasegawa &Goto (2024)中でも一定の問題提起を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな解決すべき問題が明らかになった点は大きな進展であったといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り,異性体の存在が明らかになり,かつその存在比が何らかの環境に連動していることが解ってきた.これを定量する手法を開発しなければ精度の高い水温推定はかなわない.その解決も視野に入れた計画練り直しが必要となる.まずは3不飽和分子と重複してGCから溶出する異性体をGC上で分離するためのカラム選択を進めていく.GC/MSの化学イオン化等も試していく.一方,異性体の存在量比は何らかの環境変動を記録していることが明らかであるため,どのような環境変動を記録しているかを明らかにすれば,これを環境指標プロキシとして提案できる可能性もある.これも視野に入れた研究を進めていきたい.
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[Book] 地学事典2024
Author(s)
地学団体研究会
Total Pages
1648
Publisher
平凡社
ISBN
9784582115086
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