2023 Fiscal Year Annual Research Report
非接触レーザ励起振動付与による金属積層造形インプロセス残留応力低減法の開発
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22H01358
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
宮下 幸雄 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (00303181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 勝実 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (90282871)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金属積層造形 / インプロセス / 残留応力 / レーザーアブレーション / 疲労強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属材料の三次元積層造形で問題となっている残留応力の完全インプロセスでの低減法を開発する。残留応力の発生・ 低減メカニズムを解明し、残留応力低減による効果を疲労強度特性の向上として示す。今年度に得られた主な結果を以下にまとめる。 1. ツインレーザビーム積層造形装置の設計・試作と金属積層造形実験;昨年度に開発した、ワイヤー供給レーザーDED式金属積層造形機にナノ秒パルスレーザを取り付けた装置により実験を行った。ナノ秒パルスレーザ照射により残留応力の低減効果が認められ、照射条件によって残留応力も変化した。ナノ秒パルスレーザ照射により励起される振動付与と入熱の変化が残留応力の低減メカニズムとして考えられる。次年度は、引き続き残留応力の低減メカニズムについて検討する。 2. 振動付与による残留応力低減法の検討;昨年度に開発した、金属積層造形中の造形物を動画撮影し、その画像にデジタル画像相関法(以下、DIC)を適用することで、プロセス中のひずみ分布を測定する手法により、積層造形中のひずみ分布の変化を評価した。積層造形プロセスの進行にともなうひずみ分布の変化、プロセス条件や造形物の形状がひずみ分布に影響を及ぼすことを明らかにした。次年度は、DICにより評価したひずみ分布の測定結果を、他の残留応力測定法による結果や有限要素解析結果等と比較し、残留応力発生メカニズムを明らかにするとともに、力学モデルの構築を目指す。 3. 振動付与した造形物の疲労強度特性評価;金属積層造形により作製した材料から試験片を作製し、疲労試験を行った。造形まま材とその熱処理材から作製した試験片では疲労強度に違いが認められた。次年度は、ナノ秒パルスレーザ照射を援用して作製した積層造形材を用いて疲労試験を行い、疲労強度に及ぼす残留応力低減による効果を実証し、残留応力と疲労強度特性の関係について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「1. ツインレーザビーム積層造形装置の設計・試作と金属積層造形実験」に関しては、昨年度に開発した、ナノ秒パルスレーザを援用したツインビーム照射により積層造形が可能な装置を用いて、金属積層造形実験を行い、ナノ秒パルスレーザ照射による残留応力の低減効果を2.で開発したひずみ測定手法も用いて、実験的に確認することができた。これは、当初計画以上の成果であり、今後さらに検討を進めることで、残留応力低減メカニズムを明らかにし、残留応力低減のための適切なプロセス条件およびナノ秒パルスレーザの照射条件を示すことが期待される。 「2. 振動付与による残留応力低減法の検討」に関しては、プロセス中のひずみ分布をDICにより測定し、積層造形中のひずみの変化や残留応力を評価することができた。プロセス条件や造形物の形状が残留応力に影響を及ぼすことを明らかにし、残留応力の低減効果を定量的に評価することに成功した。これは、当初計画以上の成果であり、1.と関連した実験を引き続き行うことで、残留応力低減メカニズムの解明が期待される。 「 3. 振動付与した造形物の疲労強度特性評価」は、当初計画では3年目に行うこととなっているが、上記1.および2.で計画以上の成果が得られたため、積層造形で作製した材料の疲労強度試験を開始した。これまでに、積層造形したままの材料および積層造形材料に熱処理を施した材料の疲労強度特性に相違が認められたことから、残留応力が影響を及ぼしていることが示唆された。今後は、開発したナノ秒パルスレーザ照射を援用した積層造形により作製した材料の疲労強度試験、また、本研究で確立したDICによる造形中のひずみ分布の測定や残留応力の評価をあわせて行い、疲労メカニズムや疲労強度特性に及ぼす残留応力の影響を解明することが期待される。 以上をまとめ、全体として「当初計画以上に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
「1. ツインレーザビーム積層造形装置の設計・試作と金属積層造形実験」に関しては、実験装置が完成し、さらに、ナノ秒パルスレーザ照射による残留応力の低減効果を実験的にかつ定量的に確認できた。今後は、より残留応力低減効果が高いプロセス条件およびナノ秒パルスレーザ照射条件について明らかにし、2.の検討結果とあわせて、残留応力低減メカニズムを明らかにする。 「2. 振動付与による残留応力低減法の検討」に関しては、積層造形材料表面の凹凸を利用して、DICにより積層造形中のひずみ分布の変化を測定することに成功し、また、ナノ秒パルスレーザの照射による残留応力の低減効果を定量的に評価することができた。すでに、プロセス条件やナノ秒パルスレーザの照射条件、積層造形物の形状が、残留応力に影響を及ぼしていることを明らかにしているが、引き続き様々な条件で実験を行い、残留応力低減のメカニズムを示すとともに、力学モデルの構築へとつなげる。 「 3. 振動付与した造形物の疲労強度特性評価」は、すでに積層造形まま材およびその熱処理材の疲労試験を実施し、疲労強度に差が認められている。今後は、ナノ秒パルスレーザ照射により残留応力を低減した材料の疲労強度を評価し、本開発手法の実用的な有用性を示す。
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Remarks |
・関連する受賞 日本機械学会若手優秀講演フェロー賞「金属積層造形プロセス中のひずみ分布と造形物形状の関係」 、長岡技術科学大学大学院・中里晃(2023年11月29日)
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