2022 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of Functional Composite Cellulose Fiber with Nano-Structural Control by Electric Field and Elongational Flow
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22H01393
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高奈 秀匡 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (40375118)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 繊維配向制御 / 電場 / 伸張流 / 混相流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,セルロースナノファイバー(CNF)および異種ナノ材料が混在する分散系流体において,電場・流動場下でのナノ粒子・繊維構造が流体としてのレオロジー特性に与える影響をマルチスケール解析により明らかにし,流体科学を基盤とした新たな学問的潮流をナノ材料学分野との融合により築くとともに,実用に資する高強度機能性セルロース複合繊維の創製を目的としたものである。 初年度においては,急絞り部を有する流路を用いたセルロース配向制御法を確立し,絞り部における断面積比が繊維配向に与える影響を明らかにした。急絞り部における伸長流動場によりCNF繊維の配向度が向上し,セルロース単繊維が高強度・高弾性化するものの,向上効果が得られる断面積比に上限があることが示された。一方で,電場を印加した場合では,電場印加領域を最適化することで,電場と伸長流の相乗効果により,断面積比の上限を大幅に向上させることが可能となり,より優れた材料特性を有する単繊維を得られることが明らかとなった。 さらに,CNFとカーボンナノチューブからなる安定な分散媒を得ることに成功し,セルロース・カーボンナノチューブの複合繊維創製法を確立した。また,電場を印加することで,カーボンナノチューブが配向し,カーボンナノチューブ同士が結合することで,複合繊維の導電率が向上することが明らかとなり,機能性複合繊維を創製することが可能となった。本研究によって得られた成果をまとめ,国際論文誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において,急絞り部を有する流路を用いた新たなセルロース単繊維創製法の確立より,本手法によりセルロース単繊維を安定かつ容易に創製することが可能となり,研究の効率が格段に向上した。また,本プロセスにおける電場印加効果を実験により明らかにし,今後の研究を進展する上で極めて有用な知見を得ることができた。また,ワシントン大学との共同研究により,カーボンナノチューブをカルボン酸基で化学装飾し,化学処方によりセルロースナノファイバーの帯電量を最適化することで,カーボンナノチューブの均一かつ安定な分散状態を得ることに成功した。これにより,初年度の研究目的である,セルロースナノファイバーとカーボンナノチューブから成る複合繊維を創製することが可能となり,電場と流動場による配向制御により,電気伝導性を有する高機能セルロース複合繊維の創製法が確立された。 以上の成果から,本研究課題の進捗状況について,おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては,まず,フローフォーカシング流路に対する三次元VOF法により,セルロース分散媒の流れ場を明らかにする。また,左右から流入する流れ(シース流)と主流との合流角や主流とシース流の流量比などのプロセス条件を最適化する。また,伸長流動場および電場印加下におけるナノ繊維の三次元挙動を明らかにする。本研究においては,流体内のナノ繊維を棒状繊維として扱い,電場下におけるセルロースナノ繊維の分極モデルを構築した上で,個々の繊維の並進・回転運動方程式を解くことで内部構造(配向度)を評価する。回転トルクに関しては,粘性トルク,ブラウン運動,静電トルクを考慮し,並進運動の外力項には,粘性抗力および静電気力を考慮する。得られたシミュレーション結果から各繊維に対する統計処理を施すことにより,流路における配向度分布が得られ,これにより,流路における電極構造(電場印加位置)を最適化することが可能となる。 実験においては,銀ナノ粒子を担持したセルロースナノファイバーの創製を試みる。硝酸銀をCNF分散液に混入して攪拌の後,NaBH4溶液を添加することにより,CNF上に金属銀の結晶核が形成し,核成長することでセルロースマトリックスに担持された銀ナノ粒子を生成する。処理時間を変えることで,異なる粒径を有する銀ナノ粒子を合成し,銀ナノ粒子の径および濃度がプロセスに与える影響や機能性に与える効果を明らかにする。上述の試料に対し,フーリエ変換赤外分光光度計によりTEMPO酸化CNFのカルボン酸塩由来のCOO-のピーク変化を計測することにより,分散性に大きな影響を与えるCNFと異種材料との化学的結合状態を評価する。創製した銀ナノ粒子担持セルロースナノファイバーから複合繊維創製を行い,材料特性評価を行うとともに,抗菌性や導電率についても評価し,機能性複合繊維としての特性を明らかにする。
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