2022 Fiscal Year Annual Research Report
圧力・温度・位置・変形量同時計測に基づく非定常空気力学現象の解明と高効率制御
Project/Area Number |
22H01396
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
亀田 正治 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70262243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中北 和之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主幹研究開発員 (50358595)
菅原 瑛明 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (00884800)
小島 良実 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (90886152)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 流体工学 / 航空宇宙工学 / 計測工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
翼周り流れを対象とした圧力・温度・位置・変形量同時計測法を確立し,弾性変形,移動をともなう翼における非定常空気力学現象の解明,航空機離着陸時に問題となる翼騒音を抑制する高効率制御法の検討を進めた. 第1に,「ランダムドットPSP/TSP」による圧力・温度・位置・変形量同時計測法を構築し,研究遂行の基盤となる技術を確立した.現有のレーザダイオード,高速度カメラの配置やカメラレンズの選択の最適化を図り,風洞実験で要求される物体位置・変形量測定精度,被写界深度確保した.あわせて,ロータブレードにおける層流/乱流遷移計測のためのTSP用加熱面の製作法を定めた. 第2に,遷音速翼フラッタ,ヘリコプタロータブレードを対象に解析を進めた.遷音速フラッタの先導実験によって得た試験結果を,動的モード分解(DMD)にて分析し,フラッタ発生限界近傍では圧力変動が誘起する変形モードが卓越することを明確にした.変形の時系列情報を入力とするCFD解析を実施し,フラッタ発生時に特徴的に見られる衝撃波構造をCFDで定量的に再現できることを示した.さらに,JAXA低速風洞を用いた実験を実施しヘリコプタブレードの変形状態・圧力場・温度場計測を実施した.最後に,位置,変形量のデータを用いて実際の回転時の翼の運動を入力とするCFD解析法の構築を進めた. 第3に,後縁騒音を対象に制御法を検討した.音響場を解像したCFDデータと最新のモード解析を行い,制御信号入力法を定め,パルスレーザによる擾乱を使った騒音抑制試験を実施した.JAXA低乱風洞を利用して,翼表面圧力変動のPSPによる測定と,マイクロフォンにより騒音測定を同時に実施し,騒音に直結する表面圧力変動の抑制を確認した.この現象を対象とするCFD解析を実施し,制御メカニズムに関する知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で掲げた3つのサブテーマ,(a) ランダムドットPSP/TSPによる複合計測・データ解析法の構築,(b) 移動,変形が支配要因となる物体周りの非定常空力現象の解明,(c) 流れ場情報のモード解析に基づく非定常空力現象制御法の開発のうち,サブテーマ(a), (c)は,実施計画通りの進捗が得られ,3報の雑誌論文(Imai et al. Exp. Fluids 2022; Ogura et al. Actuators 2023; Kojima et al. J. Fluid Mech. 2023)を出版し,多数の学会にて成果発表も実施できた. 一方,(b)は,本課題で初めて実施したもので,実験・計測装置のセットアップは順調に進み,実験自体は予定通り,変形状態計測,圧力場,温度場計測を実施することができた.また,変形状態を入力とするCFD解析法の構築も順調に進み,学会にて成果報告も行った.しかし,その後の実験データ解析にて,風洞の基準座標を取得するキャリブレーションの実施,およびブレードの回転状態を正確にモニタするための計測装置の改修が必要であることが判明した.また,計測に用いた感温塗料の時間応答性不足のため,現象によって生じる非定常な温度場変化をとらえるには至らなかった.最後に,圧力場計測は,風洞のマシンタイムの制約で,試行にとどまった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で掲げた3つのサブテーマ,(a) ランダムドットPSP/TSPによる複合計測・データ解析法の構築,(b) 移動,変形が支配要因となる物体周りの非定常空力現象の解明,(c) 流れ場情報のモード解析に基づく非定常空力現象制御法の開発それぞれについての推進方策を記す. (a)は,ロータブレード計測実験で生じた問題の改善を図る.具体的には,風洞の基準位置のキャリブレーションの実施,ロータの回転状態取得のためのロータリーエンコーダの設置,温度場計測に必要なロータ面加熱のための通電装置の改良を進める. (b)は,遷音速フラッタの実験データに対するモード解析法として,変形状態と圧力場を複合的に解析する手法を検討し,両者の相関を一層明らかにすることを目指す.また,ロータブレード試験において,ブレードの位置・変形状態の計測精度向上,温度場計測システムの改良の効果の検証,圧力場計測の本格的な実施を進める. (c)は,PSPによる微小圧力変動場の非定常データの解析を進める.PSP計測では挑戦的となる,微小変動圧力の時間分解計測のために,新たに,精密なフェーズロック計測システムを構築する.また,PSP計測のこれまでの計測限界である10 Pa以下の振幅を持つ圧力場の構造抽出を行えるモード解析手法の検討を進める.さらに,CFDによる現象の定量的再現を目指し,データ同化手法の導入による,CFD解析条件の最適化を試行する.
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