2022 Fiscal Year Annual Research Report
対流起因勾配拡散と電気泳動が重畳干渉するイオン輸送現象解明と可逆電池への発展
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22H01412
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平井 秀一郎 東京工業大学, 工学院, 教授 (10173204)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 亜鉛空気電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
充放電が可能な二次電池は,電気自動車用だけでなく,出力が不安定な再生可能エネルギーとの組み合わせなど,次世代の持続可能社会を構築する上で欠くことのできない最も重要な技術である.リチウムイオン電池は,車の航続距離で実質350km程度であり,リチウムイオンが固体電極材料の層状構造の隙間に出入りすることを利用する.これに対して,亜鉛空気電池は層状構造の材料を用いず,亜鉛の金属単体と多孔体で電池を構成するため飛躍的に小型軽量となる.しかしながら、亜鉛の均質な析出が制御できないことが実用化への大きな障害となっていた。本研究は,電解液の対流により形成される亜鉛イオンの濃度境界層により規定される輸送現象を利用する. 本年度は,亜鉛空気電池の電解液が流せるフロー型セルを構築した.亜鉛空気電池の放電時において、電解液に流動を加えた状態での放電曲線の計測、亜鉛電極表面の走査型電子顕微鏡による観察と表面物質の同定を行った。電解液に流動を加えることによって,亜鉛電極における放電時の濃度過電圧が減少する.また,ある流量を超えると濃度過電圧による電位の低下が起こらなくなる.この電解液流量は電流密度によって異なり,大電流密度であるほど大きな流量が必要となる.流れ無しで放電した電極表面には大きな酸化亜鉛が付着した電極表面になっているのに対し,流量を大きくするほど薄く平面的に酸化亜鉛が付着する.また,電極表面に酸化亜鉛の被膜が付着する中,電流密度を保つ上では溶解する亜鉛が電解液に直接露出している場所が必要になる.低電流密度での放電では,確保すべき亜鉛面積は小さく,酸化亜鉛は広い範囲に付着できる.このようにフロー型電池での電極形態と流動、放電曲線の関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に示したように,亜鉛空気電池に対して,電解液を流動させ輸送現象を制御できる実験装置を構築し,電解液中におけるイオンと亜鉛溶出の輸送現象が電池性能に及ぼす影響について調べた.放電試験の結果,電極表面での析出現象と電極面積、電流密度、対流によるイオン輸送が電池性能に及ぼす影響について明らかにすると共に,電解液フロ―型セルを用いることで,過電圧を低減させることに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において,電解液フロー系において、電極表面の形態観察と表面物質同定技術などを確立した.次年度以降はこれらの技術を適用しながらも、さらに電極反応のin-situで観察するX線透過計測を実施し,電池を高性能化する指針を明確にする.
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Research Products
(1 results)