2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H01433
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
下山 勲 富山県立大学, 工学部, その他 (60154332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 堅太郎 富山県立大学, 工学部, 講師 (00547482)
塚越 拓哉 富山県立大学, 工学部, 講師 (90782920)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シリコンピエゾ抵抗 / MEMS / ひずみセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者らがこれまで研究を重ねてきたピエゾ抵抗型歪ゲージをもつカンチレバー型力センサ(圧力分解能:15 nPa、最小力分解能:1 pN、周波数帯域:~100 MHz)の寸法をnmオーダーまで小さくすると特性がどうなるのかという問いに、実験的・ 理論的根拠のある答えを与えることである。ピエゾ抵抗効果は結晶構造の歪みに依存して抵抗率が変化する現象である。その歪抵抗効果を決定づけるキャリアの密度は、単結晶シリコンの原子密度に比べて4~5桁小さいので、カンチレバーを極限まで小さく薄くすると、バルクの歪抵抗効果を維持できなくなると考えられる。また、材料の境界面の表面効果が歪抵抗効果の安定性に影響するとも考えられる。本研究では微小寸法のカンチレバーのピエゾ抵抗効果を実験的に確かめ、計算とも比較する。 本年度は、当初予定を若干変更し、ピエゾ抵抗係数の概算・評価に関する論理予測モデルを作成、評価するとともに、その結果を元に試作したセンサ素子を用いた微小力の計測特性の評価・検討を行った。また装置トラブルによる試作の中断を余儀なくされたために、センサ素子の試作・開発に関する新たな方法についてのプロセス開発・検証を進めるとともに、当初予定を変更し、次年度に行うはずであったピエゾ抵抗センサの応用方法の検討を前倒しして進めた。この時、微小力の計測が重要となる心筋細胞の拍動力の計測を行い、その有効性の確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は当初予定通りシリコンピエゾ抵抗素子の感度に関してバルク材料を想定した場合のモデルを再構築し、試作した厚み80 nmのセンサの感度特性がバルク材料を仮定したセンサ特性として妥当であるか否かを評価した。 その結果、試作した厚み80 nmの片持ち梁状センサの計測感度は、外部から印加したバルク材料であることを前提とした材料力学に基づいたモデルにほぼ合致する程度のひずみ量となる1E-7程度のひずみ量を計測していることを確認した。この結果から、厚み80nmのカンチレバーでは、不純物ドープされたシリコンは厚みのある場合と同様の性能を示すことが確認され、バルク材料を想定して構築した力学的構造・特性のモデルを適用できるとの結論に至った。今後は同モデルと実際のセンサ応答を比較し、バルク材料を想定したモデルがどの程度の厚みまで適用できるか、それ以上に薄くなるとどのような補正が必要になるのかを検証する。 このモデルの結果を元に本研究が目的とするセンサ構造を薄膜化した際の影響を調査するため50 nm厚みのセンサの試作を進めたが、装置トラブルのため、プロセスを完了することができなかった。現在、装置の修理を進めており、試作完了後、計測・評価を進めることを予定している。同時にこの装置に依存しない薄膜化のためのプロセス技術の提案・開発の検討を進めている。 装置を修理する必要が出てきたため、当初予定していた超薄型センサの試作が遅れている。そこで前倒しで薄型センサの動特性を進めることとし、心筋細胞の拍動計測や振動センサの実験を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した通り、バルク材料を想定した際の変形モデルとピエゾ抵抗係数を元にバルクの場合のセンサの理想感度を計測し、現状のセンサがその範疇に収まり、バルク特性を示していることを確認した。この結果を元に現在、50 nm以下の微小膜厚の構造体を試作し、その変形・応答特性の計測を行うことを予定して研究作業を進めている。同じく前述した通り、当初予定していた50 nm構造の試作が装置トラブルのために試作が完了しておらずに計測・評価を行うことができなかったものの、装置復旧の予定はたっており、来年度中には計測・評価を行い、遅れを解消できるものと想定している。また装置復旧に更なる遅れが生じた場合に備えて、別途方法での薄膜センサ構造の試作を進めることを想定し、プロセスの開発を行っている。また得られた結果を前述した理想感度モデルと比較し、モデルの有効性の検証、バルクを超過した場合の特性の評価を行い、研究の最終目的を達成する。
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