2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H01507
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (80533190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椋 俊彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (70371028)
山本 条太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (20585088)
佐々木 章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30580162)
鈴木 祥夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60321907)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 両連続相マイクロエマルション / 液液固3相界面 / ナノカーボン電極 / 電気化学 / 選択計測 / 抗酸化物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水相と油相の2相が液滴にならず連続状態である両連続相マイクロエマルション(BME)を用いた選択的な電気化学計測を実現することを目標とする。この実現に向けて、これまでに開発してきたナノカーボン薄膜電極とBMEを組み合わせ形成される液液固3相界面の制御因子を明らかにし、様々な抗酸化物質を選択計測する手法を創出する。本年度は、3相界面の制御因子として電極表面の親疎水性が3相界面へ与える影響を調べるため、ナノカーボン薄膜表面の親疎水性を制御する方法を検討した。表面親水化はUV/オゾン法と電気化学的酸化処理の2種類を検討し、疎水化処理はCF4ガスによる反応性イオンエッチング処理を用いた。XPS測定の結果、親水化ナノカーボン表面のC/O比は0.07~0.08(UV/オゾン法)、0.12(電気化学的酸化処理)程度であった。一方、疎水化ナノカーボン表面のF/C値は0.15程度であった。これらの電極とヘプタン系BMEを組み合わせた時の、脂溶性ビタミンEと水溶性ビタミンCの電気化学反応性を検討したところ、電気化学処理した親水化ナノカーボン電極ではビタミンCのみの応答が、疎水化ナノカーボン電極ではビタミンEのみの応答が確認できた。UV/オゾン法による親水化ナノカーボン電極ではビタミンEもわずかに応答を示したことから、選択性に優れた測定には、電気化学処理による親水化ナノカーボン電極が良いことがわかった。過去に我々が選択測定を達成した成果では、親水性電極として市販の金属酸化物電極を使用したが、本研究では親水性/疎水性電極ともにナノカーボン薄膜で構築することができた。 また、超解像度顕微鏡や走査電子誘電率顕微鏡により、BME構造の可視化に挑戦した。本年度は、観察をしやすくするために、独自合成した蛍光プローブやシリカナノ粒子をBME試料中に添加して観察を行った。両顕微鏡において、均一溶液とは明らかに異なる分散状態であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ナノカーボン薄膜表面の親疎水性を制御することによって、ビタミンEとビタミンCの選択測定が可能であることを見出し、当初の目標をほぼ達成できたものと考えている。さらに、現在BME構造の可視化についても検討を進めており、おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ナノカーボン電極と両連続相マイクロエマルション(BME)からなる液液固3相界面の制御によって、選択的な電気化学計測を実現することを目標とする。この実現に向けて、次年度以降は、3相界面の制御因子としてBMEの油相が3相界面へ与える影響を調べる。現在、油相として使用するトルエン、ヘプタンより親油性の強い油相溶媒からなるBMEの方が、脂溶性物質の油相での拡散速度を向上させる可能性について、電気化学反応性の観点から調査する。こうした検討のため、構成溶媒ごとに相図を作成しBME形成の範囲を把握する。様々な電極表面を有するナノカーボン電極とさまざまなBME溶媒の組み合わせで形成される3相界面での、対象物質の電気化学挙動を評価する。また、対象物質のバルクBME中での拡散をFCS法を駆使して調べる。最近確立した方法と同様に、FCS法で得られた拡散係数(バルク)と電気化学で得た拡散係数(3相界面)を比較し、3相界面の形成状態と制御因子(電極・BME)の相関性を調べる。また、BME構造の可視化についても引き続き検討を進める。
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