2022 Fiscal Year Annual Research Report
Next-Generation Mechanism Design based on Control Theory and Economics and its Application to Smart Cities
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22H01513
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
滑川 徹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30262554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛房 義明 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (90343433)
畑中 健志 東京工業大学, 工学院, 准教授 (10452012)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サイバーフィジカルシステム / メカニズムデザイン / スマートシティ / Plug & Play 制御 / スマートパーキング / 費用便益分析 / 制御バリア関数 / 分散最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
スマートシティを大規模分散サイバーフィジカルヒューマンシステムと捉え、ネットワーク結合した異種・異構造インフラシステムの各コンポーネントをモデル化し、制御学と経済学の観点から数理的解析とメカニズム設計を行った。具体的には、以下の4つの成果が得られた。 1.システムの受動性及びPassivity-shortの性質に基づき、デマンドレスポンスを含む負荷周波数制御系における安定性解析を制御学の観点から行った。電力システムを、火力発電機、需要家のデマンドレスポンス、ネットワークシステムに分解し、それぞれのシステムの受動性、Passivity-short を示すことで安定性解析と制御系設計を行い、システムのPlug & Play性質を示した。 2.貨物輸送と同時にライドシェアサービスを提供する貨客混載車両の運行に関して、安定マッチングに基づくライドシェア同乗者決定を含む経路最適化アルゴリズムを提案した。利用客の迂回距離を基準とした選好決定と、GSアルゴリズムによる同乗者マッチングを用いて、到達コスト最小化アルゴリズムを構築した。 3.Plug & Play スマートシティの要素技術として開発されたスマートパーキングシステム、電気自動車を利用したバーチャル・パワー・プラント・システムが社会に実装される際に発生する社会的な費用と便益を経済学の観点から整理した。さらに、再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)エネルギーマネジメントシステムによる経済性を分析した。 4.ビル内の人流データに基づいて照明を制御する新規の分散最適化アルゴリズムを提案した。提案法は受動性に基づく分散最適化アルゴリズムに制御バリア関数に基づく実時間最適化を併合することで、制約条件の違反を禁止し、瞬間的な照度不足によって人が感じる不快度を抑制した。また、照明制御シミュレータを用いて提案法の有効性を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、スマートシティを大規模分散型サイバーフィジカルヒューマンシステムと捉え、ネットワーク結合した異種・異構造インフラシステムの各コンポーネントをモデル化し、制御学と経済学の観点から数理的解析とメカニズム設計を行った。 まず、制御学の観点からデマンドレスポンスを含む負荷周波数制御系における安定性の解析を行った。電力システムを火力発電機・デマンドレスポンスと電力ネットワークに分解し、それぞれのシステムの受動性、Passivity-shortを示すことで安定性を証明した。つぎに、貨物輸送と同時にライドシェアサービスを提供する貨客混載車両の運行に関して、安定マッチングに基づくライドシェア同乗者決定手法を含む経路最適化アルゴリズムを構築した。利用客の迂回距離を基準とした選好決定と、GSアルゴリズムによる同乗者マッチングを用いた経路探索アルゴリズムを設計した。 更には、スマートパーキングシステムおよび電気自動車を利用したバーチャル・パワー・プラント・システムに関して開発されたアルゴリズムを参考に、経済学の観点から各システムの社会的な費用と便益を整理した。またグリーン水素エネルギーマネジメントシステムはシミュレータを構築してその経済性を検討した。 上記の成果に加えて、スマートコネクティッドコミュニティの主要要素である人間に焦点を当て、行動経済学が明らかにした限定合理性をシステム制御の観点から解析・設計する研究を開始した。特に、多数派同調バイアスを対象とし、本バイアスが人間集団の合理的意思決定に内在する受動性を劣化させる事実を明らかにした。受動性に基づく制御の知見を援用することで集団の状態を理想状態に導くメカニズムを設計した。 以上により、目標である「制御学と経済学で共創する次世代メカニズムデザインとスマートシティへの展開」の実現に向け、おおむね順調に研究が進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的達成のために、これまでに、Plug & Playスマートシティを大規模分散型サイバーフィジカルヒューマンシステムとして捉え、ネットワーク結合した異種・異構造インフラシステムのそれぞれのコンポーネントをモデル化し、制御学と経済学の観点から導出したモデルの数理的解析とメカニズム設計を行った。今後は導出したPlug & Playスマートシティの構成要素である情報・電力・交通・経済の動的な数理モデルを活用し、モデル間の相互作用と情報結合構造の調査と解析結果、およびシステム間のアナロジーを考慮し、Plug & Playスマートシティの最適設計と動的メカニズム設計の理論構築とプラットフォーム開発を目指す。 まず、Plug & Playスマートシティの中に存在する多数のステークホルダーの意思決定問題を、ゲーム理論に基づく最適制御方策決定問題として定式化し、ナッシュ均衡解の存在条件、最適解の高速計算、安定条件を明らかにする。ゲーム理論とシステム制御理論を基に導出した理論解析結果と最適設計手法を、数値実験により検証する。 つぎに、スマートパーキングシステム、バーチャル・パワー・プラント・システムが社会に実装される際に発生する社会的な費用と便益を整理できたことから、具体的に貨幣換算し、各システムの費用便益分析を行う。また、それらのシステムが導入される際のボトルネックを明らかにする。 更には、ビルの電力消費量の大部分を占める空調と照明という時定数の異なるシステムを統合した分散最適化アルゴリズムを提案する。また、空調と照明の統合シミュレータを構築し、提案アルゴリズムの有効性を検証する。限定合理性に関する研究については、数式モデル上で閉じた議論を脱して、北九州城野地区のデータ等を用いることで実態に即したモデルを構築した上で、制御方法の妥当性、実現可能性を再考する。
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Research Products
(22 results)