2022 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解・光援用ナノプローブの開発と多元系半導体太陽電池評価への応用展開
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22H01518
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 琢二 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20222086)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 光援用ナノプローブ / 時間分解計測 / 太陽電池 / 光励起キャリア / 光起電力 / 非発光再結合 / 空乏層容量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光援用ケルビン・プローブ・フォース顕微鏡(P-KFM)、光熱モード原子間力顕微鏡(PT-AFM)、光援用走査容量顕微鏡(PCap-AFM)などの時間分解・光援用ナノプローブを開発することによって、太陽電池特性を決める主要な物性である少数キャリアダイナミクスや損失の元となる光励起キャリアの再結合プロセスを解明するとともに、特に微結晶系太陽電池材料の結晶構造との関連性を明らかにすることを目指している。各手法についての今年度の実績を以下に記す。 P-KFMにおいては、間欠バイアス印加法とポンプ・プローブ法を併用した時間分解計測法の確立を図り、同手法をCu(In,Ga)(S,Se)2[CIGSSe]系太陽電池材料に適用した。特に、照射光の波長を変えることで光励起キャリアの生成深度を変化させ、その際の光起電力の時間波形から試料内部でのキャリア移動プロセスの解析を行い、CIGSSe系材料に特異の内部バンドダイアグラムがキャリア移動に影響を与えていることを明らかにした。 PT-AFMにおいては、光励起キャリアの非発光再結合中心が存在する深さ位置によって光熱信号の周波数応答が異なると考えられることから、特に高周波数での励起光変調を可能にする方法としてマルチパルス変調法を新たに考案・導入した。CIGSSe太陽電池に適用した結果、同太陽電池の特性向上に効果が認められているアルカリ処理(ここではCsF処理)が、試料表面近傍に存在するCIGSSe層とCdSバッファ層との界面の不活性化に強く寄与していることを明らかにした。 PCap-AFMにおいては、その基礎となる表面空乏層容量計測における可変周波数測定を実現する二重バイアス変調手法の確立を図った。また、AFMでの探針-試料間距離制御が容量計測に与える影響を実験的に明らかにして、正確な容量計測を実現する上で適切な制御手法を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P-KFMについては、概ね順調に進展している。また、PCap-AFMでは、その基礎となる静電引力計測や表面空乏層容量の計測技術の確立が順調に進んでいる。 一方、PT-AFMについては、非発光再結合中心の深さ位置の解析において、単一波長光のみを照射しただけでは不十分である可能性があったため、繰り越し申請を行うことで、他の近赤外光を用いた重畳励起条件での測定を追加で実施し、より正確な解析条件を見いだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
P-KFMを組成の異なるCIGSSeを光吸収層とした様々な太陽電池に適用し、結晶構造や太陽電池特性と光励起キャリアのダイナミクスとの関連性をより詳細に明らかにすることを目指す。また、光起電力測定における正確性や時間分解能の向上を測ることによって、さらなる議論の深化を目指す。 PT-AFMでは、マルチパルス変調法に加えて、各パルスのデューティを変えることで、光励起キャリアの非発光再結合プロセスの時定数の定量的測定を目指す。また、照射光の波長をより長波長化することによって、非発光再結合中心となるバンドギャップ内準位の選択的励起を図って、そのような準位の空間分布の観測を目指す。 PCap-AFMにおいては、表面空乏層容量計測の正確性をより向上させた上で、光照射下での計測に進む。
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