2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22H01532
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
早川 竜馬 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主幹研究員 (90469768)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 分子量子ビット / 2重トンネル接合 / 縦型シリコントランジスタ / 磁気抵抗効果 / CMOS技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2022年度においては、TEMPO-OPEラジカル分子を壊すことなくシリコン2重トンネル接合に内包し、単分子接合において得られた巨大磁気抵抗効果を観測することを目的とした。TEMPO-OPEラジカル分子を壊すことなく、シリコン2重トンネル接合に内包することに成功し、3 Kにおいて分子軌道を反映したトンネル電流を観測することに成功した。また、TEMPO-OPE分子のHOMOに由来するトンネル伝導領域で明瞭な正の磁気抵抗効果を観測することができた。一方でLUMOに起因するトンネル伝導領域では磁気抵抗効果は観測されなかった。この結果から、TMPOラジカル基のSOMOと母体分子のHOMOとの相互作用により磁気抵抗効果が発現したものと示唆される。磁場中での微分コンダクタンス測定からHOMOのエネルギーシフトは3 mV/Tと見積もられ、通常のゼーマン効果によるシフト量(0.2 mV/T程度)よりも一桁大きな値が得られた。 2023年度においては、2022年度からの繰り越し予算を活用して、リファレンス分子としてラジカル基を持たない母体分子(OPE)の磁場中での電気特性評価を行った。OPE分子だけでは磁気抵抗効果が観測されなかったことから、上記磁気抵抗効果はTEMPOラジカル基によるものと結論付けた。今後はTEMPOラジカル基からニトロニトリルラジカル(NN)基を結合した新規ラジカル分子(NN-PT)について検討する。TEMPO-OPE分子ではラジカル基と母体分子がπ共役系となっていないのに対し、NN-PTではπ共役系となるため、磁気抵抗効果の増加が見込める。さらに有機ラジカル分子だけでなく、金属錯体分子である鉄フタロシアニンを用いて同様の評価を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリコン2重トンネル接合素子の中に有機ラジカル分子を壊すことなく内包し、ラジカル基によるトンネル電流制御に成功した。また磁場中での微分コンダクタンス測定からピーク電圧位置が磁場に比例して増加するゼーマン分裂に起因すると推測される結果を得た。分子量子ビットの実現へ向けた大きな一歩である。今後は、金属錯体分子でも同様の結果を得る伴に、縦型トランジスタ構造へ拡張していく。
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Strategy for Future Research Activity |
TEMPO-OPE分子で観測したシリコン2重トンネル接合素子での磁気抵抗効果をさらに助長するためTEMPOラジカル基からニトロニトリルラジカル(NN)基を結合したラジカル分子(NN-PT)について検討する。TEMPO-OPE分子ではラジカル基と母体分子がπ共役系となっていないのに対し、NN-PTではπ共役系となるため、磁気抵抗効果の増加が見込める。さらに有機ラジカル分子だけでなく、金属錯体分子である鉄フタロシアニンを用いて同様の評価を進め、磁性分子のゼーマン効果による磁気抵抗効果および微分コンダクタンスピークの分裂現象(またはエネルギーシフト)を観測することを目指す。さらに所属機関の電子ビームリソグラフィー装置を利用し2端子素子から3端子素子(縦型トンネルトランジスタ構造)へ拡張していく。C60 分子を用いた素子ですでに作製手法を確立しているため、本提案素子でも実現できると考えている。
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