2022 Fiscal Year Annual Research Report
Electron Spin Multiple Resonance in Diamond and its Application to Quantum Sensor
Project/Area Number |
22H01558
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
早瀬 潤子 (伊師潤子) 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50342746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 幸志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50392684)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子センサ / 量子スピン多重共鳴 / NV中心 / ダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダイヤモンド中窒素-空孔(NV)中心を対象として、電子スピン多重共鳴遷移に基づく3準位系特有の新奇な量子現象の観測・物理解明と、2準位系にはない機能・性能を有する量子センサの開発を目指している。 2022年度は、レーザー・マイクロ波(MW)・ラジオ(RF)波を同時かつ連続的に照射する連続波光検出磁気共鳴(CW-ODMR)測定により、電子スピン二重共鳴下でRF-Dressed状態を生成・観測することに成功した。RF-Dressed状態を用いた、CW-ODMRによる高周波交流磁場の振幅・位相センシングおよび温度センシング法を新たに提案し、それぞれ実現可能であることを実験的に実証した。さらに垂直バイアス磁場およびRF波印加によって歪・電場ゆらぎの影響を低減し、CW-ODMRスペクトル線幅を減少させること、温度センサ感度を8倍も向上可能であることを明らかにした。これらの成果は、NV電子スピン二重共鳴によって、従来にない高感度量子センサが実現可能であることを示す重要な成果である。2022年度は関連する成果を含め3本の査読付き雑誌論文を出版するとともに、国際会議MRSでの招待講演やダイヤモンドシンポジウムでの基調講演の実施、応用物理学会フォトニクスワークショップにおける優秀ポスター賞受賞など、高い評価を得ている。さらに2022年度は、(1)電子スピン三重共鳴下で生成・観測されるRF-Double-Dressed状態を用いた周波数可変交流磁場センシングの提案・実証や、(2)強励起下におけるRF-Dressed状態のFloquet理論による解析に成功しており、順調に研究が進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、ダイヤモンドNV中心の電子スピン多重共鳴現象を対象とすることで、A)RF-Dressed状態のコヒーレンス特性の解明、B)CW-ODMRによる交流磁場(強度・位相)・温度センサの開発、C)RF-Double-Dressed 状態のコヒーレンス特性の解明を目標として研究を進めてきたが、いずれも順調に研究が進捗している。A)B)に関しては、RF-Dressed状態形成によってコヒーレンス特性が改善されるメカニズムを解明するとともに、温度センサの高感度化が可能になることを明らかにし、それらの成果をまとめた学術論文をJournal of Applied Physicsにて出版した。また磁場イメージングに関する成果を発表した学生が、応用物理学会フォトニクス分科会が主催する第7回フォトニクスワークショップで優秀ポスター賞を受賞、研究代表者である早瀬が歴史ある国際会議MRS Fall Meetingでの招待講演や国内の有力ダイヤ研究者が集まるダイヤモンドシンポジウムでの基調講演を行なうなど、ダイヤ量子センサ研究において高い評価を得ている。C)に関しても、RF-Double-Dressed 状態のコヒーレンス特性が、RF波が弱い時にはRF-Dressed状態よりも改善されることやRF波のゆらぎの影響を受けることなど明らかにし、現在論文にまとめているところである。以上より、当初の計画通り研究が進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
NV電子スピン二重共鳴遷移下におけるRF-Dressed状態を用いた量子センサ開発においては、原理実証のフェーズから応用フェーズに発展させる。そのために、サンプルの高品質化および測定セットアップの改良を進めることでセンサ性能(感度・空間分解能)を向上させるとともに、交流磁場(振幅・位相)と温度を同時に測定可能な複合センサの開発を目指す。また同手法をイメージング系に適用するための実験系の構築・改良を進め、CW-ODMRによる微細回路の電流磁場・温度の広範囲イメージングを行ない、開発した量子センサが応用上有用であることを示していく。今後は、磁場と温度の数値シミュレーションを行ない、センサ信号から磁場や温度の空間分布を推定する手法を開発していくとともに、センサ性能を最適化するためのダイヤ形状や実験セットアップを考案していく。またNV電子スピン三重共鳴遷移下におけるRF-Double-Dressed状態を用いた周波数可変な高周波磁場センサ開発に関しては、感度や周波数可変範囲といったセンサ性能の定量的評価を進めるとともに、それらを決める上で重要なRF-Double-Dressed状態のコヒーレンス特性を解明していく。Floquet理論を用いた強励起下電子スピン二重共鳴スペクトルの解析に関しては、動的対称性も含めた物理的考察を進める。またFloquet理論では扱えないスペクトル線幅・深さの定量的解析を可能にするために、Lindbladマスター方程式を用いた解析を新たに進めて行く予定である。これにより、強励起下で観測されたCW-ODMRディップコントラストの特異な振る舞いの物理的な起源を明らかにしていく。
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[Presentation] ダイヤモンド中NV中心の電子スピン三重共鳴現象を用いた周波数可変な交流磁場センサ2022
Author(s)
岡庭 龍聖, 松崎 雄一郎, 山口 達万, 渡邉 幸志, 水落 憲和, 中野 裕太, 徳田 規夫, 佐々木 健人, 小林 研介, 早瀬 潤子
Organizer
第83回応用物理学会秋季学術講演会,
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