2022 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of mosques during disasters in Japan: interdisciplinary approaches
Project/Area Number |
22H01611
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小谷 仁務 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (30814404)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 昭如 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 教授 (00401696)
山路 永司 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 名誉教授 (10143405)
子島 進 東洋大学, 国際学部, 教授 (90335208)
岡井 宏文 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (10704843)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | モスク / マイノリティ / ムスリム / 災害 / COVID-19 / ワクチン接種 / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は以下の二つのサブ課題に取り組んだ。 [1. 過去の自然災害時のモスクによる支援活動] 過去の自然災害において被災地のモスクが行った活動は断片的にしか知られていない。そこで、文献調査とフィールド調査から、それら活動の実態や教訓を抽出することを目指した。2011年東日本大震災の被災地に立地する仙台モスクと福島・いわきモスク、及び2016年熊本地震の被災地に立地する熊本モスクの管理者へインタビュー調査を行った。文献調査とインタビュー調査の結果、モスクはボランティアの泊まり込みや救援物資の収集・配布、炊出しの拠点になっていることが明らかになった。救援物資の配布や炊出しはムスリムだけでなく、異教徒や日本人へも実施されていた。 [2. コロナ禍におけるモスクによる支援活動] パンデミックも災害の一種と認識されている。ここでは、現在進行中のコロナ禍でモスクが実施する支援内容を明らかにすることを目的とした。事例として、在日外国籍住民を主対象とするワクチン接種会場となった神奈川県・海老名モスクと大阪イスラミックセンターをとり上げた。前年度にモスク管理者や被接種者へ行ったインタビュー調査から、在日外国籍住民には接種に至るまでに言語や文化の壁が存在しうることを示した。接種会場のモスクでは、モスク利用者がボランティアで通訳を務めたり、男女別の接種スペースが設けられたりしたこと、それらの施策が被接種者に好意的に受け止められていたことも明らかにした。 上記二つサブ課題の結果はムスリムマイノリティ社会においてモスクがもつ災害時の多様な可能性を示すことに貢献している。 これらの研究活動の他にも、各地のモスク(宮城、群馬、東京、神奈川、静岡、愛媛)への訪問調査や災害弱者に関するレビューを行い、在日ムスリムコミュニティの基本情報や災害弱者が被る社会経済的影響に関する知見を整理した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の自然災害と現在進行中のコロナ禍の各フェーズ(過去/現在)でモスクの可能性を分析できている。また、得られた成果を、災害、土木、開発学、社会学、心理学等の多様な分野の学会で口頭発表できており、査読付き論文として国際誌(International Journal of Disaster Risk Reduction、Progress in Disaster Science)へ掲載もできている。モスクの役割を各フェーズ体系立てて理解することが進められており、知見も多分野へ広く波及出来ているため、順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去の自然災害時のモスクによる支援活動についての知見を論文としてとりまとめ、国際誌へ投稿する。また、個別のモスクを対象としたミクロ的分析だけでなく、多数のモスクを対象としたマクロ的分析を行う予定にしている。各スケール(ミクロ/マクロ)の調査・分析によりモスクの災害時の可能性を多角的に評価する。
|