2022 Fiscal Year Annual Research Report
病原細菌の網羅的検出を基盤とした小規模水供給システムにおける高度微生物リスク管理
Project/Area Number |
22H01626
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 禎彦 京都大学, 工学研究科, 教授 (10184657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 安廣 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (60610524)
中西 智宏 京都大学, 工学研究科, 助教 (90824293)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小規模水供給システム / 病原細菌 / 定量的微生物リスク評価 / 遺伝子解析 / メタバーコーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)水源の病原細菌の一斉検出手法の整備、(2)小規模水供給施設の水源に関する実態調査、(3)一斉検出された病原細菌種の妥当性評価、を実行する計画であった。 1については、16S rDNA全長(約1500 bp)を対象としたアンプリコンシーケンシング法によって水中の細菌群を網羅的に検出し、高い分類解像度で同定する手法の確立に取り組んだ。具体的には、ライブラリ調製時におけるPCRのアニーリング温度、伸長反応時間を変化させ、標準試料に含まれる細菌種を最もよく検出できるPCR条件を探索した。その後、塩基配列データの解析方法についても検討した。決定した手法を環境水に適用した結果、多くの細菌種を属レベルまでは検出・同定できた。しかし、病原種・非病原種の区別に必要な種レベルまでの分類結果はやや信頼性が疑われたため、シーケンシングエラーの問題を軽減しながら引き続き検討する必要性が生じている。 一方、2については、京都府内の4箇所の小規模水供給施設を対象として調査を進めている。これまで月1回のペースで調査を重ねており、指標微生物(大腸菌、一般細菌、従属栄養細菌、嫌気性芽胞菌など)の測定データとDNA試料(上記1の病原細菌の一斉検出に使用予定)を蓄積している。また、これらの指標微生物濃度のみが利用可能な状況を想定した微生物リスク評価手法についても検討している。 3については、1の分析手法に改善点が残ったため、まだ着手していない。次年度に一斉検出手法が確立してから、qPCR法や次世代シーケンサーMiseq(イルミナ社)によるデータ取得を行い、検出結果の妥当性を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題において最も重要な「病原細菌の一斉検出手法の確立」については、ナノポア型次世代シーケンサーの解読エラーが当初の予想以上に大きいために、やや難航している。一方、小規模水供給施設を対象とした実態調査は順調に進んでおり、基本水質等の測定に加えてリスク評価手法の検討にも着手できている。以上より、研究全体の進捗度としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
病原細菌の一斉検出手法の確立に関しては、検出結果の信頼性を向上させるためにシーケンサーによる解読エラーを補正できるUnique Molecular Identifier(UMI)法の導入に取り組む。小規模水供給施設を対象とした実態調査も引き続き行う。 ここで測定した指標微生物(特に大腸菌・嫌気性芽胞菌)の測定結果のみが利用可能な状況でのリスク評価手法についても検討する。さらに、上記の遺伝子解析手法を対象地域の原水に適用し、小規模水供給施設に存在する病原細菌の種類や特性についての情報を収集するとともに、検出結果をリスク評価にも活用し、リスク評価の精緻化に取り組む。
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Research Products
(2 results)