2022 Fiscal Year Annual Research Report
デジタルツイン・機械学習・確率理論を融合した自動港内操船制御則に関する研究
Project/Area Number |
22H01701
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
牧 敦生 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (50556496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 直哉 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20314370)
秋本 洋平 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20709654)
白川 真一 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (90633272)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自動離着桟 / デジタルツイン / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
船の自動化の中でも、特に港内操船の自動化は技術的ハードルの高い課題であることが知られています。解決すべき大きな技術課題としては、船の動的システムのモデリング、オフライン離着桟航路計画、オンライン修正航路計画、オンライン制御があります。本研究課題の初年度で得られた研究実績を、以下に個別具体的に記します。 船の動的システムのモデリングについては、実船で計測された運航データからの動的モデル逆推定に挑戦しました。その結果、線形動的モデルを逆推定するための方法論を確立でき、加えて、逆推定に必要な実船計測のデータ量についての指針も示しました。これにより、実船計測データのみから、自動運航アルゴリズムの検証用シミュレータを確立するための技術のベースが完成しました。 オフライン離着桟航路計画については、船長航路に似た航路の自動生成アルゴリズムを開発するという最終目標に向けて研究を行いました。初年度は、様々な港湾についての実船計測データから、船長航路の統計的性質を整理するための方法論を確立しました。また、得られた統計解析結果を陽に反映した、離着桟航路のオフライン最適化アルゴリズムを提案しました。 オンライン修正航路計画については、オフライン離着桟航路計画を初期値として、数秒程度で最適制御問題を解き、離着桟航路を変形して修正する計算アルゴリズムを確立しました。これにより、オフライン計算で得た航路から、風向風速などの状況が異なっても、トラッキング制御に必要な参照軌道を生成できるようになりました。 オンライン制御については、幅寄せ操船時のスウェー速度をより厳密に制御することを目的とした制御アルゴリズムを確立しました。これにより、着岸位置での繊細な位置決めと速度制御が可能となりました。また、バックステッピング法などの、非線形制御手法の船舶操縦運動制御への適用についての初期検討も実施しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個々の技術課題に対する現在までの進捗状況について以下に記します。 船の動的システムのモデリングについては、実船の運航データを用い、線形モデルを逆推定するための手法を確立しました。一方、複雑なマヌーバにも対応可能となる非線形な動的モデル、さらにはネットワークなどで表されるような動的モデルを逆推定する手法も現在検討を始めています。 オフライン離着桟航路計画については、初年度は実船計測データから船長航路の解析を行いました。ここで得られた船長航路の解析結果のうち、特に着桟点までの船速の逓減のクライテリアを着桟航路の最適化手法に陽に反映し、船長航路と等価な離着桟航路を自動生成するための方法論について、現在検討を進めています。 オンライン修正航路計画については、オフライン離着桟航路計画を初期値とし、航路を瞬時に再計画するための方法を確立しました。この計算方法に、さらに船長航路の統計解析結果から導かれる様々な拘束条件を課せるよう拡張することで、より船長航路に似た航路を自動的に計画する方法について、現在検討を行っています。 オンライン制御については、VecTwin舵装備船を対象に、スウェー速度の参照量をあらかじめ設定し、その速度を追従しつつ、着桟を行うための方法論を確立しました。この方法を拡張し、VecTwin舵以外のシリング舵やスタンスラスタなどのアクチュエータを持つ船にも、本手法を適用できるよう、現在検討を行っています。 研究内容全体を通じ、計画通り概ね研究が進捗しています。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、2年目以降、以下の検討課題について取り組むこととしています。 まず、船の動的システムのモデリングについては、実船についての運航データのみから、モデルを逆推定するための著者らの提案方法を拡張します。これまでは線形なモデルを用いてきましたが、複雑なマヌーバを表現するためには、線形モデルでは不十分な場合があります。一方、パラメータ数が増加すると、汎化させるためには相応のデータ量が必要なるため、それらのトレードオフを明らかにし、実用的な非線形な動的モデルの逆推定手法を確立します。 オフライン離着桟航路計画については、初年度に行った船長航路の統計解析をさらに深化させ、得られる結果を基に、船長航路とほぼ等価な離着桟航路を確実に自動生成が可能なアルゴリズムを確立します。特にその際、着桟点までの速力逓減と、風向と風速に応じた岸壁との離隔距離の自動設定などが主要な検討課題となるでしょう。また、強化学習により、離着桟航路を自動生成するための方法についても検討をします。 オンライン修正航路計画については、これまでに著者らが提案した計算手法をさらに発展させ、オフライン離着桟航路計画で用いる速力逓減や離隔距離の設定なども考慮しつつ、瞬時に離着桟航路を再生成する方法について検討を行います。 オンライン制御については、モデルベース制御に基づくパストラッキング手法や強化学習によるパスを用いないオンライン制御など、複数の手法について検討を行います。
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Research Products
(10 results)