2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on safe navigation of a giant ship passing through a narrow canal based on kinematical analysis
Project/Area Number |
22H01703
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐野 将昭 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (40582763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 秋彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 主幹研究員 (10344334)
安川 宏紀 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (40363022)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 船舶工学 / 縮尺模型実験 / 運動シミュレーション / 運河(狭水路) / 水深影響 / 側壁影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,狭くて浅い運河を航行する巨大コンテナ船の運動特性を解明し,定量的な運動予測および事故予防に寄与する学術的知見の獲得を目的とする。2022年度は,実船長400(m)に及ぶオリジナル巨大コンテナ船(以降MCS)を設計し,約1/128模型を製作した。また2021年のスエズ運河座礁地点での運河の断面形状を模した縮尺模型(台形型・全長30m超・分割式)を製作した。主要な研究実績をまとめる。 [1]MCSの操縦性能の解明(深水域):本学曳航水槽で抵抗/自航試験,舵角試験(舵直圧力を評価),整流試験(舵への流入角を評価)を,水産技術研究所(水技研)において斜航・CMT試験(船体流体力を評価)を実施した。そしてMCSが深水域で操縦運動する際の流体力特性を解明し,運動モデルを構築した。また水技研において,操縦運動試験を実施し,深水域における操縦性能を評価した。 [2]MCSの操縦性能の解明(浅水域):九州大水槽において,水深喫水比1.3, 1.59, 1.9の3つの浅水域で拘束模型試験を実施した。水深に応じた流体力の変化を明らかとし,水深毎に運動モデルを構築した。また水技研において,これら3つの浅水域で操縦運動試験を実施し,操縦性能に及ぼす水深影響を明らかとした。 [3]運河航行時の流体力と針路安定性の解明:運河模型を本学曳航水槽内に敷設し,その中でMCSを曳航させる拘束模型試験を実施した。試験項目毎に水深,船速,水路中心からの逸脱距離を複数変更し,それらが運河を走るコンテナ船の流体力特性へ与える影響を明らかとした。続いて岸壁影響を含む多項式型流体力モデルを同定し,所定の針路を保持する際の釣り合い状態,ならびに固有値解析に基づき,その釣り合い状態での安定性(針路安定性)を評価した。 [4]水技研水槽に運河を設置し,運河内をオートパイロットで保針航行させる自由航走試験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,広島大,九州大,水産技術研究所の各水槽で拘束模型試験(流体力を計測),操縦運動試験(運動を計測)を実施し,貴重な実験データを収集した。実験的研究はじめ種々の研究成果が得られており,現在までに研究計画書に記載した通りの内容を概ね順調に遂行できていると考える。但し,より考察を深めるべく,また流体力の計測精度の確認も兼ねて,今後,これまでに運河で実施した拘束模型試験の一部の追試験等も予定している。具体的には次の通りである。 [1]運河内を航行時に,当初の予想よりも流体力に及ぶ船速影響が大きい事が判明した。2022年度はスエズ運河の推奨速度8.64(kt)と,座礁事故当時の状況に近い速度12(kt)相当の2船速で試験を実施したが,特に水深が浅い状況では,より系統的な評価が望ましい。そこで船速点を増やして,追加の試験を実施する。 [2]模型船を強制的に正弦波運動させるPMM試験の実施に際して,2022年度は曳航電車の制御システムの開発(LabVIEW)に着手し,予備的な試験データを取得した。その結果,運動周波数によっては計測流体力が小さく,バラツキが生じる事もあった。それらの経験も踏まえて,繰返し試験を織り込んでPMM試験を実施する。 当初の予想よりも拘束模型試験点数が増える見込みであるが,2022年度を通じて実験のノウハウは蓄積できており,円滑な実験的研究の遂行を期待できる。また運河内をオートパイロットで保針航行させる自由航走試験は,2022年度に前倒して実施済みであり,総合的には順調な進捗状況と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に則り,水槽試験による実験的研究,実験結果に基づく運河内を航行する船の運動モデルの構築,それを用いた針路安定性解析や運動シミュレーション,そしてCFD解析を推進していく。 [1]実験的研究:昨年度は,運河を敷設しての大規模な水槽試験が初めての試みであり,種々の初期トラブルがあった。一方,貴重な経験を積む事ができ,多くの実験ノウハウを習得できた。本年度は引き続き運河内での拘束模型試験が予定されているが,それらの実験ノウハウを生かして,首尾良く実験準備を行い,起こり得るトラブルを事前に予想しながら,滞りなく実験的研究を推進する。特に今年度に実施する船速影響の系統的な調査では,水深が浅く,船速が速い場合は,船体姿勢変化により触底の恐れがある。一層留意して,慎重に試験を実施する。またPMM試験は,運動周波数の依存性が大きい。適切な試験条件を設定し,加速度項に関わる付加質量や,Yaw運動時の船体流体力に及ぼす岸壁影響を評価する。 [2]運動モデルに基づく検討:昨年度は,直進状態における釣り合い状態,その時の針路安定性を論じる目的から,流体力を多項式で記述し(perturbation法),線形運動方程式に基づく議論が主であった。よりダイナミックな運河内での操縦運動を論じるという観点から,MMG型の非線形運動方程式に基づき,操縦運動シミュレーション計算を試みる。先行して実施済みの自由航走試験データを活用し,計算精度(運動モデルの妥当性)の検証を進める。 [3]CFD計算による検討:オープンソースCFDによる数値計算を行う。今後,風圧力下での議論を深めていくに当たり,コンテナ船の上部構造物や,デッキ上のコンテナ配置をデザインし,風圧力の推定を行う。また運河内で発達する船体周囲の流場を明らかとし,操縦流体力との関係性を考察していく。
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Research Products
(4 results)