2022 Fiscal Year Annual Research Report
レーダポーラリメトリによる超広域河川氾濫地域の被災度判定手法の開発
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22H01726
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 亮一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00293184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 寛喜 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20251788)
山口 芳雄 新潟大学, 自然科学系, フェロー (50115086)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 洪水 / 超広域観測 / 広域避難支援 / レーダポーラリメトリ / 合成開口レーダ |
Outline of Annual Research Achievements |
レーダポーラリメトリを用いた超広域河川氾濫地域の被災度判定手法を開発するために、2022年度は以下の研究を行なった。 はじめに、ALOS-2/PALSAR-2で取得された全偏波PolSARデータ(HH,HV,VH,VV)に対して、散乱電力分解等を適用して画像解析を行なった。夏季に発生した水害の被災領域(水田、河川、堤防、橋梁、および市街地)の被災前後の画像の比較を行い、顕著な変化が観られる偏波散乱成分(あるいは偏波指標)を確認した。 水田からの偏波散乱特性の変化は、水稲生育状況の把握に加え、相対的な水位推定に応用できる可能性があるため、電波暗室で行なった実水稲モデルに対する散乱測定で得られたデータも用いて詳細な解析を行なった。その結果、田に水が溜まっている場合、比較的高い周波数帯においても水稲下部まで入射波が水稲に浸透して、水面と水稲下部との間に2回反射散乱が生じることが確認できた。この2回反射散乱は、ある程度水稲が成長してくると、後方散乱電力は小さいものの、建築物と地面との間に生じる2回反射散乱に類似した偏波特性を有することから、偏波回転補正が可能となり、任意のレーダ照射方向に対しても有効な水稲生育状況把握および水位推定に有効な指標となりうることがわかった。 橋梁および市街地からの散乱については、被災前後にその電力差が小さくなり顕著な変化を捉えにくい。そのため、特徴ある偏波特性の差を取得するため、橋梁モデルおよび住宅モデルに対する電磁界シミュレーションを細かい入射条件(主に入射角、スクウィント角の変化)に対して実行した。 散乱電力分解手法の改良についても着手した。従来手法では、レーダ照射方向に対して大きく傾いた建築物に対しては、植生からの散乱と誤判定する場合があり、被災領域誤判定につながる可能性があった。この問題を解決あるいは緩和するための改良法の開発をはじめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究順序の変更や、解析結果を鑑みた計画変更による若干の遅れはあったが、水害災害時における超広域洪水領域の状況把握を実現するための基礎理論解析は進められており、当初予定の目標は概ね達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
各解析対象領域に対して取得されたPolSARデータの画像解析に加え、より詳細な偏波散乱解析(電磁界シミュレーション)を進める。このシミュレーションで用いる各モデルの媒質の複素誘電率は、可能な限り実際の測定値を用いる予定である(誘電体プローブとVNA用いて実際の媒質の誘電率を測定する)。昨年度購入した解析装置をフル稼働させ、複数の解析装置による同時計算により偏波散乱解析を加速させていく。 電磁界シミュレーションによる数値解析データが集まってきたら、各被災領域の被災状況把握に適した簡易アルゴリズムの構築を試みる。誤警報確率の変動を一定の範囲内に収まるように、機械学習の要素を適用した改良を行いたい。以上のように構築した被災状況把握のアルゴリズムを、様々なシーンの実PolSARデータに(取得可能となれば ALOS-4/PALSAR-3データにも)適用してその有効性を確認していく。
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Research Products
(7 results)