2022 Fiscal Year Annual Research Report
2次元構造秩序の自己組織化に着目した濃厚環境下の強誘電体薄膜成長メカニズム
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22H01763
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木口 賢紀 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 教授 (70311660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 貴久 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 准教授 (50758399)
内田 寛 上智大学, 理工学部, 教授 (60327880)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 強誘電体 / 薄膜 / 界面構造 / 2次元構造秩序 / 濃厚環境 / 核生成・成長 / STEM-EELS / 化学溶液堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)薄膜状態でMPB組成域のPbZr0.3Ti0.7O3となるように調整したMOD溶液を、TiO2終端STO(001)基板上にスピンコート、溶媒を乾燥し、凝集した薄膜を作製した。残留有機官能基が2次元構造秩序の核生成・成長に及ぼす影響を調べるため、結晶化前の局所構造を解析し、結晶化温度以下で熱分解することで前駆体薄膜を作製した。熱分解ののち結晶化温度以上で熱処理し、結晶化薄膜を作製した。前駆体薄膜XRD法及び薄膜断面の制限視野電子回折図形の測定から、前駆体薄膜は非晶質、結晶化薄膜はSrTiO3(001)基板上にCube-on-cubeの方位関係でエピタキシャル成長していた。 (2)これらの薄膜について、STEM-EELS法により近傍のC-K吸収端近傍の内殻励起スペクトルの測定・解析を行い、非晶質前駆体薄膜には強いC-K吸収端が測定され多量の非晶質カーボンの存在が認められたが、結晶化膜にはC-K吸収端は認められなかったことから、このカーボンは測定中のコンタミネーションではなく前駆体薄膜中に残存した残留カーボンであることを示している。 (3)熱分解後の前駆状態薄膜組織をHAADF-STEM観察したところ、膜厚約30 nmの多孔質非晶質膜であったが、結晶化温度以下にもかかわらず基板表面には整合的にPb原子1層と考えられるコヒーレントな2次元界面層が存在した。この結果より、結晶化温度未満の温度であっても原料有機金属錯体が熱分解する温度であれば、濃厚環境下において格子ミスマッチ5%以内の単結晶基板表面に整合的に核生成し、2次元構造秩序を形成したと推察される。 (4)熱分解を行わずに結晶化温度以上で熱処理した薄膜では強い配向性を示さなかったことから、薄膜基板界面における残留炭素の存在が、基板表面の2次元構造秩序を引き継いだ結晶成長を妨げ、エピタキシャル成長を阻害することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択直前に所属機関の異動が決まり、研究設備の移設作業と環境整備・装置立ち上げ作業に時間を要したため、年度内の成果報告が不十分であった。既に実験環境は整ったため、次年度に遅れを挽回する。
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Strategy for Future Research Activity |
半導体不足や感染症による納期延長のため、研究設備の移設作業、電源増設や環境整備・装置立ち上げ作業に必用な部品や機材の調達に想定外の時間を要したが、年度後半には実験を再開できた。初年度実施できなかった実験項目については、今年度分として遅れを挽回する。特に次年度は、結晶化に伴う局所配位構造の変化、基板表面構造やZr/Ti組成比が核生成・成長に及ぼす影響、ゾルーゲル法とMOD法との原料由来の相違点についてミクロな視点から検証する。
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