2023 Fiscal Year Annual Research Report
2次元構造秩序の自己組織化に着目した濃厚環境下の強誘電体薄膜成長メカニズム
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22H01763
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木口 賢紀 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 教授 (70311660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 貴久 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 准教授 (50758399)
内田 寛 上智大学, 理工学部, 教授 (60327880)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 強誘電体薄膜 / 結晶成長 / 核生成・成長 / 2次元構造秩序 / PZT / 配位子場 / STEM-EELS / 化学溶液堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の作成した非晶質前駆体薄膜と、SrTiO3(001)基板上にCube-on-cubeの方位関係でエピタキシャル成長した結晶化薄膜について、STEM-EELS法によりTi-L2,3及びO-Kエッジ近傍の内殻励起スペクトルによるエネルギー損失吸収端微細構造(ELNES)の測定・解析を行った。 まず、Ti-L2,3エッジのELNESについて述べる。Ti-L2,3エッジは、配位環境の対称性によってどのように5重に縮退したd軌道がどのように解けるかを示しており、BO6(B:Ti,Zr)型のOh対称場の下ではt2gとegに帰属されるピークに分裂する。ここで着目すべきは、非晶質の段階で既にt2gとegに分裂したOh場、つまりBO6型の配位構造が形成されていることである。特に、配位子場分裂幅に着目すると、非晶質相は菱面体晶もしくは擬立方晶的な配位構造、結晶化した界面層は正方晶に類似した配位構造をとることが明らかになった。 すなわち、非晶質前駆体形成段階にて、Oh対称場を持つBO6(B:Ti,Zr)型のクラスターが形成されていることを示唆していることが初めて明らかになった。 次に、O-KエッジのELNESについて述べる。O-K ELNESは、3つの主要ピークから構成され、吸収端側からTi3d(Zr4d)-O2pの混成、Pb6p-O2pの混成を示し、非晶質の段階でこれらの化学結合ができている。したがって、非晶質薄膜内では、Oh対称場を持つBO6(B:Ti,Zr)クラスターがOを介してPbと結合を作っており、ペロブスカイト型構造の前駆状態となっていることを示す。一方、第3ピークはO-O原子間距離の広い分布を示し、不均一に歪んだBO6八面体が不均質に繋がった短距離秩序構造を持つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CSD法を利用した濃厚環境下におけるPZT薄膜の結晶成長メカニズムのうち、本年度は2次元構造秩序構造やそれを核生成サイトとしてエピタキシャル成長する微視的なメカニズムについて走査透過電子顕微鏡及び電子エネルギー損失分光法により、明らかにできた。 特に、非晶質層における構造秩序の発達に関する知見や2次元構造秩序構造における僅かな歪み状態を配位子場分裂の視点から解明できたのは大きな進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、結晶化に伴う局所配位構造の変化、基板表面構造やZr/Ti組成比が核生成・成長、ドメイン構造など薄膜組織に及ぼす影響について微視的な視点から検証する。
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