2023 Fiscal Year Annual Research Report
複合アニオン酸化物熱電変換材料-熱伝導率低減による性能向上と機構解明-
Project/Area Number |
22H01766
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
片瀬 貴義 東京工業大学, 元素戦略MDX研究センター, 准教授 (90648388)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 熱電変換材料 / 熱伝導 / フォノン |
Outline of Annual Research Achievements |
水素濃度xを制御したSrTiO3-xHxバルク焼結体の作製と熱電特性評価および熱伝導・キャリア輸送特性の解析を行った。まず、放電プラズマ焼結法(SPS)において、水素が脱離しないように金属箔で密閉する工夫を施すことで、高濃度に水素を含有するSrTiO3-xHx焼結体を作製した。具体的には、粒径300nm以下のSrTiO3粉末とCaH2粉末をグローブボックス内で混合し、430~520度の低温で真空加熱して、水素化したSrTiO3-xHx粉末を作製した。SrTiO3-xHx粉末を10mmφ×1mmtのペレットに成型し、水素を吸蔵しないPtやステンレスの金属箔で密閉した。その後、SPSにより水素が脱離しないようにした密閉環境で1050度で10分間焼結を行うことによって、焼結密度96~99%のSrTiO3-xHx焼結体(x=0.057~0.216)を作製することに成功した。SrTiO3-xHxバルク焼結体の熱伝導率を計測したところ、SrTiO3多結晶体と比べて、僅か2.3%のH-置換(x=0.068)で格子熱伝導率が5.5W/mKまで減少し、更にH-濃度を増やすと3.6W/mK(x=0.216)まで減少させることに成功した。次に、SrTiO3-xHx焼結体の電気特性を調べたところ、従来のSr1-xLaxTiO3焼結体と比べて非常に高い電気伝導度を示すため、高い出力因子を実現できることが分かった。SrTiO3-xHx焼結体では粒界散乱が殆ど寄与しておらず、室温でも単結晶と同等の高い電気伝導度(1740S/cm)を示すことが分かった。その結果、SrTiO3-xHx焼結体の高い出力因子と低い格子熱伝導率の両立によって、Sr1-xLaxTiO3焼結体や単結晶よりも高いZTを実現できることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、水素置換によるSrTiO3の低熱伝導率化と熱電性能向上とその起源解明まで進めることができた。第一原理計算から見出した複合アニオン化合物の合成と熱電特性評価も進めており、当初の計画よりも進んだ研究に取り組むことができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
酸素位置を他のアニオンで置換したバルク試料を作製し、フォノン散乱におけるアニオン種の効果を実験と計算の両面から検証する。第一原理計算により見いだされた複合アニオン化合物の合成と熱電特性の評価に取り組み、低熱伝導率と高い変換効率を有する新材料の探索を進める。
|